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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第10章 黒山羊さんからのお手紙


 「頭を下げろ」と中也さんにこっそり云われ、わたしは慌てて頭を下げた。

「やぁ、君が昨日中也くんが連れて来たという子だね?」

 頭を上げなさい、と言う首領の言葉に、わたしは弾かれるように頭を上げた。

「私は森。森鴎外だ。ポートマフィアの首領をやっている」
「は、初めまして。如月泉と申します」
「泉くん、だね。……君は迷いに迷って此処を選んだ、という事で良いのかな?」

 首領の声と表情は柔らかく優しいが、視線だけはとても鋭い。わたしを値踏みするかのように視線はジロジロとわたしを見ていた。
ふぅっと息を吐き、簡潔に伝えた。

「……元は探偵社と関わりがありました。けれど、色々あって戻れなくなってしまって。そこを中也さんが拾って、わたしを連れてきて下さったんです」
「そうなのかね……」

 少し興味を惹かれたのか、首領はほんの少しだけ身を乗り出していた。

「まぁ善い。入団を許可しよう」
「!」
「但し、此処に入るからには私の命令は絶対だ。……君の行動次第では君を殺すこともあるだろう。その覚悟はあるかい?」
「ええ。元より命など諦めております」
「良い心がけだ。……君の命は今この瞬間から私の物だ、くれぐれも言動には気を付け給え」
「畏まりました、首領」

 ゆっくりと頭を下げる。首領が満足そうに頷いたのが判った。 「さて、当分の君の配属だが」今までの冷えた空気は一変、首領の纏う空気は大分柔らかくなった。

「紅葉くんが君を欲しいと言っていてね。だから暫くは彼女の部隊に入ってもらおう」

 中也くん、連れて行ってやってくれ。首領がそう命じると中也さんは「畏まりました」と恭しく頭を下げた。首領の許可を得てから部屋を下がり、扉をパタンと閉めた。

「……緊張したぁ……」
「大丈夫か」
「い、一応……。やっぱりマフィアの長って雰囲気が凄いですね」
「まぁな。これから姐さんの所連れてくから、付いて来い」

 その言葉で納得する。そっか、昨日中也さんが言ってた姐さんって紅葉さんの事なのか。

「善いか、姐さんは普段は優しいが怒らせたり殺しの任務の時はマジで怖いからな」
「そ、そんなにですか……」
「おやまぁ、私の事を話しているのかえ?」

 不意に後ろから綺麗な声が聞こえた。

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