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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第9章 深夜零時、闇。


 太宰さんと別れてからどの位経ったのだろう。わたしは河原に座り込んで膝に顔をうずめた。ふわりふわりと光が舞うのが何となく判った。
 探偵社の皆の所へは戻れない、頼れる人も居ない。わたしが居る事で誰かを巻き込む位なら、いっそ。そう思った時、「おい」と頭上から声がかかった。

「手前、帰ってたのか」
「ひゃっ? ……ち、中也さん?」

 わたしの目の前に浮いていたのは中也さんだった。「よっと」ストンと河原の砂利に着地する。太宰さんといいこの人といい、何で双黒は上から登場するんだ。

「び、吃驚した……」
「何だよ、居ちゃ悪ィのか」
「そんな事言ってないじゃないですか」

 もう、と軽く溜息を吐くと、中也さんはケッと吐き捨てた。

「如何して此処に?」
「不思議な灯が見えたからな、見回りがてら見に来たンだよ」
「嗚呼、これ……」
「でも手前は『ライブラリ』じゃ無かったか? 異能」

 中也さんが不思議そうに首を傾げた。そうか、この人知らないんだ。わたしは少しだけホッとしながら掻い摘んだ説明をした。

「ええ、一寸訳あって異能が変わっちゃって」
「異能が変わったァ?」
「そうなんです、色々あって」
「色々ねェ……。まぁ善い、それよか手前は此処で何してンだ」
「あー……。宿無し飯無し一文無しです」
「は!?」

 中也さんの目がこれでもかと言うくらい見開かれた。

「手前は如何するンだ?」
「いやぁ、正にこれからどう生きようかと思って……。この異能、制御が未だ出来ないし、如何にかして此れを活かせる仕事に就こうかと思ったんですけど」

 あはは、と困り果てて軽く頬をかくと、中也さんは呆れたように、溜息を吐いた。

「夜は目立つぞ、其れ。女一人でそんな物ぶら下げてたら『襲って下さい』って言ってるようなモンだ」
「ですよねぇ……」
「で? 手前の異能は何なんだ?」
「えっと、治癒異能です。直接触れた相手の傷を自分に移すことで相手を回復させるっていう……」
「要するに自分はどんどん傷つくって訳か」
「そうなりますね」

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