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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第3章 夜道にはお気をつけて


「此のまま君がこの街に居れば今の所平気だからさ。出て行ったら……」
「出たら如何なるの?」
「何が起きるかは判らない。若しかしたら恐ろしい事が起きるかもしれない。ま、歯車が狂うのは確実だろうね」

 自称神様は先程までの明るい雰囲気を消し、沈んだ面持ちで云った。その暗い表情を見たわたしは怖くなって問うた。

「どう云う意味……?」
「秘密。……って事で、その異能は頑張って使いこなしてね〜」
「は!? ちょ、」

 自称神様はまた逆さまになって何も無いはずの空間にスルスルと戻って行った。残されたわたしは頭を抱え込んだ。

「どーすんだこれ……」

 取り敢えず棚をしまう事を強く念じたら本棚は消えた。直ぐに家に飛び帰り、ライブラリに入っている話を確認する。

 『茨姫』『眠り姫』『がちょう番の娘』『人魚姫』『赤い靴』
そして­­──『始まりの女王』。自称神様が云っていた通りの話だった。後はわたしが読んだ事のある本だけれど、自称神様が例に出した本以外は使えないのか、本を出す事も開く事も出来なかった。

「……とにかく、この限られた本でどう戦うのかを考えなくちゃ」

 先ず一番使い易いのは『茨姫』だろうか。攻撃も防御も出来る。だが思い通りに動かすには練習が必要だ。二足の草鞋を履いている身からすると、かなり予定が詰まって来るだろう。
 ここ暫くの予定を確認し、空いている時間を部屋での異能練習に費やす事にした。其処まで考えて、わたしはがくりと頭を垂れた。

「はぁ……。何で異能なんて……」

 狙われる云々の話は正直信じられない。だって、この二十年間生きて来て、命を狙われるなんて事は全く無かったのだから。今更云われても、という感じではある。

「しょうがない、か……」

 兎に角、貰った以上は使いこなさないと。何時誰が来るか判らないのだから、先ずは一人で能力を伸ばす訓練でもしよう。わたしは大きな溜息を吐いた。

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