第18章 徒然なるままに
次の日。出社すると扉の前に敦くんと鏡花ちゃんが立っていた。
「あ、泉さん! お早うございます!」
「お早う。如何したの二人共」
「泉さんを待ってたんです。さ、扉を開けてください」
鏡花ちゃんとわたしは首を傾げながら、云われた通りに二人で扉を開けた。
瞬間、パンパンパン! という弾けた音が聞こえた。
「鏡花ちゃん、泉さん、入社おめでとう!」
探偵社の仲間が全員揃って、わたし達にクラッカーを向けていた。部屋の中は華やかに飾り付けられ、白いクロスが掛けられたテーブルには沢山のご馳走に葡萄酒やジュースも置いてあった。
「す、凄い……」
「二人まとめて悪かったな、泉」
国木田さんが少し申し訳なさそうに眉根を寄せた。わたしはくすりと微笑み、首を横に振る。
「いえ、全然。寧ろ歓迎会を開いて貰えるなんて嬉しいです」
「なら善いが……太宰とは如何なった?」
少し声を抑えて尋ねられる。わたしもそれに合わせて声を低くして答えた。
「指環を渡されました。結婚しようって」
「そうか……。良かったな」
「この事知ってたんですね」
「太宰から聞いたからな。知ってるのは俺だけだと思うが」
「その方が嬉しいです。バレたら恥ずかしいし」
そう云って二人で笑う。くい、と鏡花ちゃんが服の裾を引っ張った。
「なぁに?」
「お姉さん、私、家族になって良い?」
「え?」
「妹になる、お姉さんの家族になる」
決意の硬い瞳がわたしを射抜いた。「そりゃ名案だ」近くにいた与謝野さんが楽しそうに笑った。
「妾も家族に入ろうかねェ」
「与謝野さん!?」
「妾はそうさね、姉って所かねェ?」
妾じゃ不満かい? そう問われ、わたしは慌ててぶんぶんと首を大きく横に振った。
「い、いえ全然! 寧ろ嬉しいです!」
「そりゃ善かった」
「大家族だね、泉お姉さん」
ふふ、と笑っていると敦くんもその輪に入った。
「僕もその家族に入って善いですか?」
「大歓迎よ。有難う」
「弟として、泉お姉さんをしっかりお守りします!」
「格好良いね、敦くん」
「私も守る……。夜叉白雪で」
「妾だって守れるさ」
「凄い、守られてばっかりだ」
あはは、と四人で笑い合う。ふと、与謝野さんがわたしの左手を見た。