第17章 愛の伝え方
「君を初めて見たのは……図書館だった」
「図書館なんですか?」
「自殺が失敗して機嫌悪くてね。何と無く寄ったんだ」
其の時、わたしはカウンターで何かの仕事をしていたらしい。
「仕事をしている時の横顔が綺麗で、つい見蕩れてしまった。君のくるくる変わる表情を可愛らしいと思ったのだよ」
同僚と話している時、空き時間に本を読んでいる時、全ての時で表情が違っていたと云う。
其処まで見られていると何だか恥ずかしい。
「その後、私の自殺現場で再会しただろう? 運命だと思ったよ。そして、また会えないかと思った」
実際何度も会った。偶然にしては出来すぎていたけど。
そして、そんな不思議な運命の下、わたし達は恋人になった。付き合い始めてからも色んな事があって、別れそうになる事だってあった。
「でも今こうして隣に居るじゃないですか」
「ふふ、そうだね。じゃあこれからも居てくれるかい?」
太宰さんはそう言いながら小さな箱を取り出した。わたしの掌に其れを載せ、「開けてご覧」と促した。
重い蓋をゆっくり開けると、そこには小さな宝石が付いた指輪があった。
「……これ、って……」
「泉、君を愛してる。私と結婚してくれるかい?」
わたしは思わず抱き着いた。こんなサプライズ、嬉しくない訳が無い。わたしは抱き着いた姿勢のまま大きく頷いた。
「嬉しい、有難う太宰さん」
「そこまで喜んで貰えると嬉しいよ。……泉、此方を向いて」
云われた通りに少しだけ顔を上げると、太宰さんの綺麗な顔が眼前に迫った。
「ん、」
「一寸しょっぱい……。でも何時もの君の味だ」
云い乍ら太宰さんは何度も何度も触れ合うだけの接吻を唇に落とした。
其れらは少しずつ深くなり、わたしはとんとんと太宰さんの胸を叩いた。
「ん、ちょ、ま、待って」
「……如何したんだい? 嫌だった?」
「違くて……。わたしもプレゼントある、から」
わたしの本題を伝えると、太宰さんは嬉しそうに頬を緩めた。
「有難う、嬉しいよ泉」
「ん、だから……っ接吻は一寸待ってってば!」