• テキストサイズ

徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第15章 生命を司る樹


 ヘリに乗り込むと、何やらボタンやレバーが沢山あった。ヘリの操縦は本当に少ししかやっていない。取り敢えずうろ覚えの操作でレバーを動かすと、ふらふらと機体が浮かんだ。

「よし、このまま前進して……」

 ゆっくりレバーを動かし、機体を前に進める。丁度その時、わたしの機体に無線が入った。

『泉、白鯨はもう少し上にいる。高度を上げられるか』
「国木田さん? 了解です」

 云われた通りに機体の高度を上げると、『大体その位置だ。後は自分で何とか乗り込んでくれ』と無線から国木田さんの声。わたしは「了解」と返してから無線を切った。
 次いで白鯨に無線を送る。

「此方補給機。着陸地点を出して下さい」
『此方白鯨。了解した、暫し待たれよ』

 すると何も無かった筈の前方から白鯨が現れた。どうやら身を隠していたらしい。やがて着陸地点が出され、わたしはヘリをそこに着陸させた。
 ヘリから降りると、黒服にサングラスというわたしと似た出で立ちの男がいた。

「補給機なんて頼んだ覚えは無いんだがな……」
「無いでしょうね。だってこれ、補給機じゃないもの」
「何……!?」

 驚く男の腕と足をそれぞれ拳銃で撃ち抜き、ヘリに投げ入れる。

「暫くそこで寝ててね」

男が動けない事を横目で確認し、わたしは敦くんを探しに走り出そうとした。でも動けなかった。
目の前に豊かな髭を蓄えた老人が立っていたからだ。

「……貴方は?」
「儂はハーマン・メルヴィル。この白鯨を作りだした張本人じゃ」
「白鯨を……? て事は組合の人間ね」

 わたしは持っていた銃を老人に向けて構えた。何かあればすぐ撃てるように。

「待ってくれ給え」

 老人は銃を構えられても動じることなく、静かに云った。わたしは構えた銃を下ろさずに老人を見据えた。

「儂は君が何者かは知らないが、先ずは儂の話を聞いてくれまいか」

 どうやら攻撃の意思は無さそうである。わたしは銃を下ろした。

「おや、いいのか」
「ええ。丸腰の貴方に銃を向ける理由は無いわ。御免なさい」

 そう云って謝ると、老人は少し表情を緩めた。

/ 161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp