第14章 社内会議
「ふぅ、美味しかった」
ご馳走様、と言う太宰さんに、わたしは笑ってお粗末さまでした、と返す。お粥は一人用の土鍋に作った物が全て無くなっていた。
「じゃあこれ、片付けて来ますね」
「えー……。もう一寸此処に居てよ」
駄目? と首を傾げる太宰さんの顔はわたしがうっと言葉に詰まる程整っている。
「でもわたし、他の仕事も……」
「久し振りに会えたのだよ? もっとくっつきたいじゃないか」
「……一寸だけですよ」
椅子から少し腰を浮かせて太宰さんと抱き合う。ぎゅうっと抱き締められるが、それでも体が痛くなる事は無かった。
「……はぁ、久し振りの君の匂いだ……」
「凄く変態ぽく聞こえますね」
「私がこうなったのも君のせいなのだよ?」
「それ蒸し返さないで下さいよ……」
「私が元気になったら、寂しくさせた分だけ構って貰うからね」
「はいはい」
ぽんぽんと背中を叩く。太宰さんは落ち着いたのか、暫くするとすぅすぅと寝息を立て始めた。
太宰さんをベッドに寝かせ、わたしは使った土鍋や茶碗を給湯室に片付けた。
……そういえば、組合との抗争はどうなっているんだろう。そんな事を考えながら医務室に戻ると、そのタイミングで扉がノックされた。
「はい?」
「小娘、俺だ。今から会議があるが来れるか」
「判りました、行きます」
メモ帳とペンを持って医務室を出た。太宰さんがちらりと此方を見たのに気付かず、わたしは扉を閉めた。
***
会議室に入ると、福沢社長を始め、乱歩さん、与謝野さん、潤一郎くん、賢治くんが揃っていた。
国木田さんはスクリーンの横に立ち、わたしは福沢社長にぺこりと頭を下げた。
「お早うございます、社長。遅くなり申し訳有りません」
「お早う。其れ程待ってはいない、席に着け」
社長に云われ、わたしは与謝野さんに示された席に着いた。
「全員揃ったな。──では、会議を始めよう」