• テキストサイズ

徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第13章 探偵社


 探偵社に向かう道中、社長の携帯に電話が入った。

「私だ」
『社長! わたくしです、ナオミですわ!』
「どうかしたのか?」
『事務所に立て篭もり犯が……! 敦さんを人質に取っていますの! 迂闊に手が出せなくて……』

 立て篭もり犯。人質。わたしの頭は瞬時に事件へとシフトチェンジする。「面倒事は重なるものなのだねェ」太宰さんが溜息を吐いた。

「犯人は一人、虎の小僧が人質だ」

 電話を切ると、社長は静かにそう云った。電話の声は少し大きめだったから、車内の全員に内容が知れ渡っていた。

「じゃあ敦くんが虎化すれば大丈夫なんじゃ……」
「無理だ。異能を使って反撃しても、犯人が興奮してほかの人を傷付けないとも限らないし」

 太宰さんの言葉にわたしはぐっと詰まった。どうしようか。立て篭りなら犯人は何かしら武器を持っている筈だ。それを叩き落とせれば何とかなるかもしれない。

「犯人の性別は?」
「女一人だそうだ。だから余計に手荒な真似が出来ん」
「判りました。国木田さん、独歩吟客で拳銃を出して貰えますか?」
「何をする気だ?」
「そりゃあ勿論」

 わたしはくすりと笑った。

「犯人の制圧と敦くんの救出です」

***

 拳銃をスカートのゴムに差し込み、前からは見えないようにしておく。両手は挙げて、反撃の意思が無いことを証明し、油断を誘う。
 犯人はわたしが丸腰だと思っているのか、視線は鋭いものの舐めているのが目に見えた。

「こんにちはお姉さん。突然で申し訳ないけれど、彼を離して貰える?」
「それ以上近付いたらこの子を殺すわよ」

 ピタ、とナイフの先端が敦くんに刺さる。わたしは言われた通りに足を進めるのを止めて、その場に立ち尽くした。

「OK、じゃあ此処で話しましょう。得物はそのナイフだけ?」
「……さぁ、どうかしら」
「あら残念。……話してくれたら楽になれたのに」
「何を、」

 腰から拳銃を取り出した。パァン! と発砲音が鳴る。ナイフの刃に弾が見事に命中した。
 油断していたらしい犯人はナイフを取り落とす。その隙にわたしは二人に駆け寄り、ナイフを蹴り飛ばした。袖から護身用のナイフを持ち出し、敦くんの縄を解く。「離れてて」と囁くと、敦くんはこくこくと頷いた。わたしは女性の腕をぐっと捻りあげた。

「何も持ってないと思った? 御免なさいね、わたし卑怯なの」

/ 161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp