第11章 板挟み
「手前も準備しとけよ。いつ何時戦闘になるか判らねェからな」
「微力ですがお手伝いさせて頂きます」
「無理はすんなよ。死なねェ程度にやれ」
「……善処します」
「戦闘要員から外してもいいんだぜ? 泉?」
「申し訳ありません頑張ります」
手のひらを返してぺこりと頭を下げると、中也さんは楽しそうに笑った。わたしの存在意義が治療と戦闘のみだから、其れを奪えばわたしは大抵の言うことを聞くだろう。其れを判った上でやっているからタチが悪い。
「……あの、中也さん」
ふと、わたしは気になっていたことを尋ねた。
「如何した?」
「戦争に、なるんですよね、これから」
「そうだな」
「……止める方法は無いんですか」
敵である組合だって人間だ。人を殺す戦いは出来る限りしたくないし、何より太宰さんや社の皆と戦うのは苦しい。
その思いを感じとったかのように、中也さんはふぅっと息を吐いた。
「ねェな」
「そんな! 無闇に戦って血を流す必要は無いでしょう!?」
「手前ならどうする? 敵は二つある、その両方を潰さねェと俺達は仕事にならねェ」
横浜をどうするつもりかは知らねェが、俺達の仕事の邪魔をするならぶっ潰すだけだ。中也さんはそう言った。
「でも……」
「手前が言ってる事は私情を挟んだ手前目線の見解だ。マフィアとしてどう動くべきかなんて、考えなくても分かるだろうが」
とくとくとく。赤紫の液体が中也さんのグラスを再び満たした。