第2章 はじめまして×一次試験
お兄ちゃんと逆方向に進みながら、ぼんやりと面子を把握する。
さっきからガルに集まる視線が多い……鬱陶しいな。
いっそのこと絶をしてしまおうか?
とか考えつつ、『家』から持ってきたチョコレートを口の中で溶かす。んー、良い甘味。
「やあやあ、可愛いお嬢さん!ルーキーだね!」
は?
話しかけて来たのは16番。
「オレはトンパってんだ。もう35回も受けてるから、まぁ試験のベテランってこと。わからないことがあったら何でも聞いてくれ!」
トンパ、さん。
なんだかとても胡散臭い。
「…ありがとうございます」
頼る気なんてないけれど。
「お近づきの印にジュースをあげよう!トマトジュース、好きかい?」
ふーん。
「…ありがとうございます。貰います」
缶の蓋に小さな穴。大方そこから毒か何かを入れたのだろう。
多分、効かないけど。
「私からもお近づきの印に、これどうぞ。チョコレートです」
さっきまで食べていたチョコレートを割って渡す。トンパさんが噛み砕く瞬間に呟く。
「致死量のトリカブト入り。美味しいでしょう?」
一瞬の沈黙。
「うわぁぁあぁっ!!」
せっかくあげたチョコレートを取り落として逃げていったトンパさんの後ろ姿を見送ってくすりと笑う。
「せっかく無味無臭の毒を用意したなら、入れた証拠はきちんと消さないとね。あーあ、勿体ない。このチョコレート、自信作なのに」
うん、トマトジュースよりチョコレートの方が私は好き。
「くっ、くくっ、わはははは!お前、おもしれーな!」
さっきから私とガルを見ていた男の子がいきなり爆笑しはじめた。
「俺、キルアっていうんだ。お前は?」
……キルア、くん発見。
流石私の弟。同じ銀色の髪だ。
「…アリス。よろしく、キルアくん」
お兄ちゃん、地味に視線寄越すのやめてくれない?
「よろしくな!アリス、俺にもそのチョコレートくれよ!それと、キルアでいーぜ」
んー、可愛いなぁ。
「わかった、キルア。これチョコレート」
パキリ。再びチョコレートを割ってキルアに渡す。
「それじゃあね、キルア。試験、頑張ろ」
もう少し話したいところだけど、これ以上お兄ちゃんの視線に晒されるのは勘弁。
「ありがとな!アリスも試験がんばれよ!」
うん、私の弟ってかわいい。
お兄ちゃんが溺愛するのもわかるかも。
