第8章 〜想いよ、届け〜
『あー、そうかも』と家康と栞は
揶揄うように雪姫を横目でみた。
『お、お二人とも酷いですわ
私、鬼じゃありません!!』と
プイッと横を向いた。
家康と栞は
(/// 拗ねたとこ、初めて見た ///)
と顔を見合わせてお互い、いいもの
見れたね!とばかりにコクっと頷く。
やはり、そこは意気投合できてしまう。
『雪姫さん、冗談ですよ
機嫌なおしてー』
『分かってます、拗ねてみただけです』
とにっこり微笑む
もう、雪姫が『雪姫』と呼ばれるように
なったいきさつなど、何の冗談話と
思うくらい素直に感情表現できる
ようになっていた。ただ、記憶に
関しては、一切、戻る気配は
なかった。
そんな栞と雪姫の会話を優しい
眼差しで見つめる家康。
こんな時間がずっと続いたら
いいのにと思わずには
いられなかった。
『家康様?』と声をかけられ
ハッとした。
『な、何?』と雪姫に答える。
『あのう、私もお願いがございます』
『うん、何?』
『歩けない間、何もしないのは
やっぱり、落ち着きません。
もし良かったら、お薬の調合を
ご教授頂きたいのですが
お願いできませんでしょうか』と
頭を下げた。
(雪姫と一緒にいられる口実が
できる。)と内心喜んでる癖に
『そんなことしないで、怪我
早く治す方に専念したら』
と素っ気なく言う。
『どうしても、ダメですか?』
の雪姫の困った上目遣いに
(/// かぁ〜 ///)と赤くなる家康を
じっと観察する栞。
(ほんとだ、光秀さんが言ってた通り。
雪姫さんに対する家康様の反応を
見れば、その時の家康様の
心の動きは手に取るように
分かるからって言ってたけど
確かに、分かりやすいかも)
(でも、その気持ちは良く分かる!
雪姫さんのあんな顔見たら
絶対そうなるよね?分かる分かるよ
うんうん)と一人頷く栞。
家康は、『あんたが、そんなに
言うなら、教えてやってもいいけど』と
語尾は、蚊の鳴くような声だったが
『ありがとうございます!宜しく
お願いします』と嬉しそうな姿に
また二人は(/// 堪らない ///)と
思うのだった。
こうして、家康御殿生活の初日は
過ぎて行った。