第8章 〜想いよ、届け〜
そして、次の日から
栞の弓と馬の特訓が始まったが
まずは馬に慣れようと、栞は
無知のまま、馬の後ろに立ってしまった。
慌てた、家康は、栞の腕を掴み
自分の方に引き寄せた。
『あのさ!!あんた、死にたいの!
馬の後ろに立ったら蹴られて
当たりが悪けりゃ、死ぬよ!』
と怒られ
弓は、型を手取り足取り教えて
貰い、何とかそれっぽい型に
なると、栞は矢を飛ばしてみたい
と家康に頼んだ。『まだ、早いし
無理だと思うけど』と言う家康を横目に
矢を放った。矢は、少しだけ
飛び、ぽとりと落ちた。
それでも初めてやって、矢が飛んだ
ことに感激した栞は、
『やった!矢が飛んだ』と喜ぶ。
そんな栞に、
『光秀さんが言ってた事わかったわ
あんたの能力の高さに驚かされる』
『えー!ほんと、嬉しい』と照れてる栞に
『うん、どうやったら、真っ直ぐ飛ばした
はずの矢が明後日の方向に飛ぶのか
俺にも教えて欲しいわ』と鼻で笑う。
『ひどーい、やっぱり家康様は
意地が、悪いー』と、ぷんぷんする栞。
特訓を見届けたいからと練習を
見に来ていた雪姫は微笑ましい
二人が眩しくて堪らなかった。
(栞さんのお人柄に
私が惹かれたように家康様も
栞さんと過ごすうちに
もっと、惹かれていくはず・・
そしたら、私の出る幕など
本当になくなりますね・・)
そんな、雪姫の気持ちなど知らない
二人は、雪姫の目の前で、
また楽しそうに言い合いを始める。
そんな二人をこれ以上みていては
気持ちが顔に出てしまう。
そう思い、ちょっと疲れたから
と女中達に肩を貸してもらい
自室へ向かった。
雪姫に表情に違和感を感じながら
横目で見送る家康。
女中達に、自室の前の縁側に
腰掛けさせてもらい。
『ありがとうございました』
と丁寧に礼をいった。
縁側から足を投げ出し、ため息をつき
庭を眺めた。
突然、木々の影から何かが飛び出してきた。
『何?』と思って見ていると
なんと子鹿だった。
昨日は、全く気づかなかったが
子鹿は、雪姫になんか頂戴と
でも言うように、頭を擦りつけてきた。
『ごめんね、今は、何にも持って
ないからあげられないの・・・
お腹空いてるの?』
と子鹿の頭を優しく撫でた。
『君、可愛いいね。ここのお家の子
お名前なんて言うのかなぁ』と子鹿に
話かけた。すると、
『わさび』と声がした。