第8章 〜想いよ、届け〜
どんどん、悲しげな表情になる
雪姫に、気づき
『別に、そんな気にしなくていいよ』
と、自分に不躾な事を言ったと
気にしているのだと思い、そう言った。
だか、雪姫は、
『家康様のお心は、今でもその
許嫁の方でいっぱいなのですね
その方が羨ましいです』とポツリと
本音をこぼした。
家康は、『えっ?』と思ったが
栞を口説いていた時の信長様を
思い出し、一途に思ってもらえない
ことを悲しんでいるのかと思い
『信長様と栞の事は、あんまり気にしない
方がいいよ、信長様は人を揶揄うの
好きだし』と慰めたが、それが恋敵の
信長様を庇っている事になると気づき
(はぁー、何言ってんだ俺)と頭を抱えた。
雪姫は、『えっ?』とキョトン
とした顔をした。そして、家康が何を
言いたいのか察した。
『家康様?あの、間違えていたら
すみません。もしや家康様は
私が信長様をお慕いしていると
勘違いなさってませんか?』
家康は、驚いたように
『えっ、だってそうなんじゃ』
と、半信半疑ではありながら自分の中に
希望の光が差し込んだ気がした。
そして、念押しして聞いてみた。
『だって、あんた信長様の正室候補
なんだろ?』
『えーっ、私がですか?』と
言うと、雪姫はあり得ないと
ばかりに驚いた顔をしていた。
『だ、だって、ずっとそんな噂
聞こえてきてたし・・・』
『あれは、あくまで嘘です。
私が、信長様のご正室になるなんて
あり得ませんよ』と雪姫はキッパリ。
(へっ?だって信長様の為にって
浪人に襲われた時も言ってたし
何より、誰が見たって信長様への信頼は
絶大だと分かるし、てっきり)
と、目をパチクリさせ驚き、固まる家康に
『確かに、ご正室候補と噂されてるのは
存じております。でも、信長様は私にとり
年もそんなに離れていないので、こう言っては
信長様に失礼ですが、父の様にお慕い
してはいます。実際に命を助けて頂き
その後もずっと見守ってきて下さいました
から、私にすれば大恩人で、この世で最も
大切な方には変わりありませんが
ご正室になるなど考えたことも
ございませんよ』と真顔で言った。
『でも、あんたがそう思ってても
信長様は違うんじゃ・・・』と、しつこいと
思われるかもと思ったが、ここは大事な
ところだと思い、この際どうしても
はっきりさせたくて、更に聞いた。