第7章 〜それぞれの自覚〜
栞も今日の一部始終を報告する為
会議に参加することになった。
皆の着替えを待つ間
栞は、一足先に広間にきて
さっきの信長と雪姫の光景を
思い出していた。
(私を守ってくれる為に、あんな
危ない目に合わせてしまった。
しかも、強引に連れ出したばっかりに・・・)
そして、それとは別に栞が、一番ショックを
受けたのは、信長が取り乱した姿だった。
(最初は、怖いだけの人だと思って
たけど、誰よりも思慮深く、誰よりも
愛情深い人だった。今ならよく分かる。
そして、あんなに取り乱すほど信長様に
想われてる雪姫さん・・・私は
いつも揶揄われてるだけだもんね・・)
そう思うとチクリと心が痛み
涙が出た、さっき雪姫を
思って流した涙と
今流れた涙は、意味が違う
ことに栞は、気づいては
いなかった。
秀吉が、着替えを終えて
広間にやってきた。
泣いている栞をみて
『どうした?また泣いてんのか?
雪姫も無事だったし、気にするな』
『だって、信長様の大事な雪姫さんを
私のせいで、危ない目に合わせたかと
思うと、申し訳無くて・・・あんなに
取り乱した信長様も初めて見たし
そしたら余計に申し訳なくて・・』
『そんなに、取り乱してたように
見えたのか?まぁ、確かに滅多に
見ないお姿だが。でも、お前が信長様を
助けた後、ぶっ倒れた時も、結構
取り乱してたぞ!肩を怪我してるの
に、自分が運ぶってきかなくて困ったよ。
お前を抱き上げて、馬に乗せて
さっさと行ってしまうし、あの時は
正直、焦ったよ』と思い出し苦笑いする秀吉。
『えっ?』とキョトンとする栞
意識がなくなる前、ふわっと
宙に浮いた感じと、温かかった
感触がありありと思い出された。
(そうだったんだ、信長様が私を・・・)
『どうした、今度は顔が緩んでるぞ
ほんと、お前の顔、いっつも忙しいよなぁ』
と、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
『ひどい!そんな、人を百面相みたいに
言わないで下さいよ!』ぷぅっと
頬を膨らます栞。
『だから、それが忙しい顔だって
言ってんの!』と
二人で顔見合わせ
笑った。
『よし!元気出たみたいだな』
と秀吉はそう言うと、自分の席に戻り
残りの皆を待った。
(最初は、あんなに怪しまれていたのに
今では、本当に頼りなる
お兄ちゃんみたいだよ)と
栞は、思っていた。