第7章 〜それぞれの自覚〜
反物を買い、それからは
小物を見て回った。
しかし、その辺りから
こちらに鋭い視線を送ってくる
男がいる事に雪姫は気づいた。
気づかれぬよう、はしゃいだ
様子を演じながら、男達の
動きを見ていた。
『母上、ちょっと小腹がすきましたわ』
と問いかけると
栞は待ってましたとばかりに
『私も空いた〜』とお腹をさすった。
『あらあら、じゃ、あそこの団子屋で
休憩しましょうか』と千草に
続くように団子屋へ向った。
向かいながら、視線を
さり気無く流し確認したが
(やはり、私達の後をつけている)と
雪姫は、確信した。
団子屋に到着し、団子を注文すると
雪姫は、千草と栞に自然に振る舞う
よう小声で言うと、お茶を飲む仕草
をしながら、二人に話始めた。
『栞さん、千草、私達は誰かに
つけられているようです。』
一瞬『えっ?』と声を上げた
栞に目配せし、栞も自然に振る舞う
ことに集中した。
まるで、他愛ない会話を
しているかのように装いながら
雪姫は、続けた。
『多分、私達を狙うと言うことは
信長様に敵意のある輩だと思います
捕まれば、何をされるかわかりません。
もし、栞さんの身に何かあれば私は
信長様に、一生、顔向けできません。
千草、私が囮りになり、男達を
引きつけます。私に集中が集まったら
一旦、家屋に隠れ、気配がなくなり
次第、栞さんを城にお連れして
いいですね』
(雪姫様、危険過ぎます)と声に出した
かったが、一度そう決めたら決して
曲げない性格だと言うことも、雪姫を
幼い頃から育ててきた千草には
痛いほど分かっていた。
『承知致しました』と砂を噛む
ように答えた。
自然に自然に振る舞うことに
必死だった栞だが、雪姫の
強い意思の眼差しの前に
止めても無駄な事は分かった。
でも心配で心配で不安な表情を
隠せくなっていた。
そんな栞に
『栞さん、心配しないで
一応、これでもある程度の
護身術は身についてますから』
そう言って、お団子をパクリと
食べ、『美味しい』と大袈裟に
喜んで見せた。
それから、パッと立ち上がり
『母上、私一つ買い忘れた
物がございました。今から
買いにいってもよろしい?』と聞こえる
ように言うと
それに合わせるように
『分かりました。母は少し
疲れましたから、二人で
ここで待っていますね』
と栞の手をそっと握った。