第7章 〜それぞれの自覚〜
ーーー山深い中に建つ
とある、古い一軒屋
そこで、怪しい密談をしている
数人の男達。
『信長は、正室候補と側室候補の
二人の女を囲っているようです。』
『二人なら尚、好都合ではないか
切り札は、多いにこしたことはない』
『では、このまま、女二人の
動向を探り、機が訪れましたら
滞りなく、決行致します。』
『ああ、そうしてくれ。
その女二人を、使って信長を
わしの前に引きずり出し
その首を我が手にする。
首を洗って待ってるがいい信長。
必ず貴様を地獄に落としてやる・・・
クックック・・・あっはっはっは』
怨念のこもった笑い声が
山中に不気味に響いていた。
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身に迫る危険など知る由もない
二人は、今日は、城下へと
買い物に来ていた。
付き添いで千草も一緒だった。
姫修行のお礼をどうしても
雪姫さんにもしたいからと
雪姫が遠慮するのを尻目に
お願いだからと強引に
連れ出しのだった。
どうせなら雪姫が気に入った反物で
着物を仕立ててあげたかったのだ。
栞は、後二ヶ月もすれば
この時代から、居なくなる。
だから、その間にできることは
なんでもしたかった。
雪姫に対しては特に。
出かける際に目立っては
いけないからと二人に地味な
小袖を着るように勧めた千草
だったが無駄だった。
すれ違う人は、男女問わず皆、必ず
振り返り二人を見るので千草は
気が気ではなかった。
もし、安土城の姫君達だと
知られては、不届き者に
拐かされるやも知れない。
千草は、二人に失礼を承知で
親子を装うように提案した。
二人は、提案に乗った。
雪姫が姉で栞が妹と言う設定
まで付け加え楽しむことにした。
千草を何度も『母上』と呼んで歩いた。
お芝居とは言え千草は、胸が熱くなり
涙がでそうだった。
呉服屋屋に入ると
雪姫の目に、一番先に飛び込んで
きたのは、薄い黄色地に赤や桃色の
小花が散りばめられた反物だった。
『可愛らしい』と反物を手にとり
当ててみたが、普段から落ち着いた
色の着物を着ることが多かった
雪姫は、自分には似合わない気がして
反物を戻そうとした。
すると栞は『お姉様、可愛いい
これ、絶対似合うよ!』と言ってくれ
千草もうんうんと頷いた。
『そうかな?』とはにかんだ雪姫
だったが、その反物を選ぶことにした。