第6章 〜二人の姫君〜
(くそ!何だよ、極秘事項って
その、極秘事項を三成は知ってて、俺だけ
知らない?はぁ?あり得ないんですけど!!)
ますます、イライラした。
天守閣に到着すると
『信長様、栞の診察結果のご報告に
上がりました』と、声をかけた
『家康か?入れ』と言われ
信長の部屋に入ると
平静を装い、一先ず栞の診察結果を
報告した。
信長は、『あい、分かった』言うと
『で、他にもわしに用があるような
顔してるが何か言いたいことでも
あるのか?』
と家康に言った。
(何だよ、この人のこのお見通し感は)と
自分を見透かされていることに
観念し、信長に素直に聞いてみる
ことにした。
『お聞きしたい事があるんですけど』
『なんじゃ、申してみよ』
『さっき、雪姫本人から十より以前
の記憶がない話を聞きました。
他の武将が皆知っていることだとも
でも、俺は知らなかった。
ここに来る途中、秀吉さんに聞いたら
極秘事項だから信長様の許しが
ないと教えられないっていわれました。
だから直接、信長様に聞こうと思って
ここにきました。極秘事項を俺だけ
知らないって、信用されてない
みたいで、納得いかないんですけど』
『ほう〜、雪姫自ら貴様に話たのか
なるほどのう・・・
貴様が知ることがなかったのは
貴様と同盟を結ぶ前に
既に他言無用の極秘事項に
なっていた事ゆえ
誰も口にしなかったのだろう
それだけの事だ』
『だけど!・・・』口籠もる家康。
『だけど、何だ?言うてみよ
そもそも、貴様にはあやつの事は
関係ないではないか、興味も
なかろう?それとも何かあやつの
過去を知らねばならぬ事情でも
あるのか』と家康を煽る信長。
『別に、確かに関係なんてありませんよ
ただ、記憶をなくすほど辛い目に
あったなら、少し俺と似てる気がして
聞いてみたかっただけです。
名前も変えたいくらい辛い思いって
・・・』
『で、本当の名は聞いたのか?』
『いえ、聞いてません』
『だろうな。他の者どもが、知って
いるのは、貴様があやつに聞いたのと
同じ程度の話だ。』