第6章 〜二人の姫君〜
雪姫の事情を自分だけが
何も知らなかったことに拗ね
悔し紛れの苛立ちを
雪姫と栞に八つ当たりし
部屋を出てきた家康。
それは、同時に自分に対しての
憤りに変わっていた。
いつもそうだ、天邪鬼な自分に
無性に腹が立って仕方ない。
傷つけたいわけじゃない
それどころか、もっと
雪姫を深く知りたかったくせに
素直になれなかった。
眉間に深いシワを刻み、不機嫌極まりない
様子でこちらに向かってくることに
気づいた秀吉は家康に声をかけた
(あぁ、また何かあったか)
『おい!家康、どうした、今にも噴火しそう
な火山みたいな顔して』
『はぁ?噴火しそうな火山みたいな
顔って、どんな顔ですか』
(だから、今のお前みたいな顔だって)
『いや、すげぇ苛ついてるから、雪姫
と何かあったのか?さっき信長様と
あの栞とか言う女を診察しに
行っただろ?』
『べ、別に何もありませんよ』と
顔を逸らし俯く家康。
(今度は、何かありましたって 顔に
書いてあるし、ほんとわかりやすいな
だいたい、お前がイライラしてる時は
雪姫絡みだしな、あと三成もか)
『で、何があったわけ?』と秀吉。
『別に何もないですよ。ただ・・』
と口籠もる家康に、
『ただ、何だよ?』と秀吉。
家康は、意を決したように秀吉をみて
『秀吉さん、あの人が記憶がないこと
知ってたんですよね?』
(こいつ、何でそれを!!他言無用
になってるはずのことを、しかも
家康だけには知らせるなって言われ
てたのに)
『あの人って、誰よ?』と少しとぼけると
『とぼけないで下さいよ!ゆ、ゆ、雪姫
のことですよ』
(はぁ〜、名前噛んでるし)
『ああ、知ってるよ。でもそれは
極秘事項だからな、信長様のお許しが
ないと、悪けど、例えお前にでも
話せないよ』
『分かりました、じゃ信長様に
直接聞きます。
あと、それからあの栞って
女ですけど、間違いなく間者でも
刺客でもないと、思いますよ。
あんなのが忍びなら世も末です。
じゃ、失礼します』
と肩をいからせながら歩いていった。
(家康があの女をそう見定めるなら・・
危険はないのかもな・・・
にしても雪姫の事になると
歯止めがきかんのは相変わらずだな
やれ、やれ、あとは、信長様が
何とか、してくれるだろう・・・)
と家康とは反対方向に歩き出した。