第5章 〜未来から来た姫君〜
初めて聞いたら、誰だって
衝撃を受ける発言を、当たり前のように
話す雪姫の心内を全く読めずにいた。
しかも、自分が知りたいと思った雪姫の
過去を他の皆は、当然のように知っている。
だが、自分だけが知らされていない事実に
対する衝撃は、みるみる苛立ちに、変わった。
他の武将が誰も教えてくれなかったのは
俺は、信用に値しないと思われているからか?
と思うと、ショックだった。
そして、雪姫に八つ当たりしてしまった。
『何それ?聞いてない。
てか、そんな衝撃的こと、あんたは
なんで、ヘラヘラして言えちゃうわけ?
俺には、信じられないけどね。
(くっ、そんな言い方したい訳じゃない
傷つけたいわけじゃない、やめろ!)
雪姫って名をって、じゃ本当の
名前はちがうっての?まっ、俺には
関係ないし、そもそも、興味もないけど。
(なんでこんな言い方しかできない、くそ!)』
と不機嫌を滲ませ低い声で、乱暴に言った。
自分だけが雪姫の何も教えてもらえてない
悔しさが天邪鬼に、輪をかけてしまった。
傷つけたくないのに、口から出るのは
本心とは、真逆な事ばかり。
酷いことを言っていると自覚しながら
自分を止められない情けなさ。
自分で自分が嫌になる。
家康が不機嫌なのは手に取る
ように分かっていた雪姫は
黙ったまま、家康を見ていた。
見兼ねて、口を挟んだのは栞。
『ちょっと、家康様!
そんな言い方、酷いし、失礼だよ!!』
と、声を荒げた。
『はっ?人を意地悪呼ばわりした
あんたにだけには、言われたくないね。
てか、あんたにこそ、何も関係ないし』
『じゃ、おれ忙しいから行くわ』
と、襖をピシャーンと強めに締めて
部屋を出て行った。
『何あれ!』プンプンする栞。
『雪姫さん、大丈夫?気にすること
ないよ、家康様って、あんなに
失礼な人の?信じられない』と
雪姫を庇うように言った。
栞には、押し黙ったままの雪姫が
表情には出さないし、涙も見せないけれど
心が泣いているように見えて
胸が痛んだ。