第5章 〜未来から来た姫君〜
最初に口火を切ったのは、秀吉。
『信長様、やはりあの女は、今ひとつ
信用 できません。本当に、大丈夫なの
でしょうか?』と。
信長は、『もし、あの女が敵の刺客なら
あのまま、放っておけば、わしの命は
勝手に尽きたはず。しかし、あの女は
一歩、間違えれば、己が切られたやも
知れぬと言うのに、わしの目の前に
飛び込んできた。あれは、どう見ても
何もものを考えてはおらぬ顔であったぞ』
とニヤリ。
『それに、あの妙な格好の間者では
目立って、仕事になるまい』と光秀。
『しかも、信長様が息一つ上がって
ない中、ゼェゼェ言って、しまいには
ぶっ倒れたんだろ?そんな体力の
ない奴が、間者なら笑えるぞ?』と政宗
『いや、しかし、そう装っている
可能性だってあるではないか』とまた秀吉。
『演技だとしたら、素晴らしい演技力
ですね。』と三成。
イラッとしながら
『三成、あんた、ちょっと黙ってて』
と家康。
『ただ、素性が分からないんじゃ
秀吉さんの言うとおり、警戒はしておいた
方がいいんじゃないですか?』と家康。
『まぁ、例え刺客でも、わざわざこの
鬼の懐に入ってきた、命知らずの阿保なら
その勇気だけは、褒めてやらんとな
クックック』と、信長。
(確かに、そんな命知らずな阿保は
いない)とそれぞれが妙に納得した
表情になる。
『では、素性を探りながら
今暫く、様子見ということで』と
秀吉は、渋々承知し、一先ず
栞についての話は、終了した。