第5章 〜未来から来た姫君〜
まだ、意識を失ったままの栞。
しかし、沈んだ意識が少しずつ
呼び覚まされる。
どこか、遠くの方でしている
パチ・・パチ・・と言う音。
何かが、焦げる様な匂い。
ずぶ濡れで、寒いくらいだった
はずなのに、ジリジリと熱く
肌が焼けるように痛い。
シャキーン、シャキーンとしきり
に金属がぶつかり合うような音と
男達の怒号。
そして、栞は、ハッと意識を取り戻した。
栞の目に飛び込んできたのは、
辺り一面の火の海だった。
自分に身に起こったことの状況が
全く呑み込めずにいたが
このままでは、焼け死んで
しまうことだけは分かった。
立ち上がり、逃げ道を探し
キョロキョロする。
ふと、視界の端に
肩を抑え、柱に持たれかかった
人影が見えた。
そして、その人影に向かい
刀のようなものを降りあげ
近づいて行くもう一つの影。
『危ない!!』
そう言うより先に、身体が
勝手に動きだしていた。
その人の手をガシっと掴み
無我夢中で走りだした。
『貴様、何者!』そんな
声が聞こえた気もしたが
それどころではなかった。
どこをどう逃げたのかも
わからなかったが、掴んだ
手だけは、しっかり握っていた。
そして、何とか敷地内から
外へと出る事ができた。
やっと手を離し、倒れそうな
ほどフラフラな身体を
両膝を掴み、支え
肩で息をする栞。
『ハッー、ハッー、ハッー』
酸欠状態の頭で、栞は
必死に考えていた。
一体、ここはどこで
自分の身に何が起きてるのか?と
少しでも情報を得ようとと
整わない息の中、必死で
見慣れた景色が何でもいいから
ないだろうかと、当たりを見回す。
だが、車も信号も電信柱の一本すら
見つからない。
あるのは、あまり高くない家屋と
舗装されてない道、鬱蒼とする
林があちこちに点在しているだけ。
見慣れたものなど、やはり
一つも見つけられない。
視線を林から反対側に流そうとした時
一瞬だが、奥の木の影にお坊さんらしき
人影が見え、視線を感じた。
けれど、遠かったし
気に止めて、二度見する余裕は
その時は、なかった。
やっぱり、おかしい・・・
絶対、おかしい・・・
一体ここは、どこ?