第5章 〜未来から来た姫君〜
二人の再会から、三年の月日が
流れた。
信長は、次々と領土を拡大し
天下布武達成は、目前に迫っていた。
朝廷からの『征夷大将軍』の正式な
勅令を受ける為には色々と根回しが
必要だった。
その準備の為、京に来ていた。
京に到着したのは、夕暮れ時。
以前より、懇意にしていた
本能寺で一泊させてもらい、明日は
朝廷に出向く予定になっていた。
本能寺に到着すると、夕日は沈み
辺りは、薄っすら暗くなり始めていた。
ー同じ日、同じ時刻の五百年後の未来ー
卒業旅行を兼ね、京都の友人に
会いに来ていた栞。
デザイナーの専門学校を卒業し
憧れだった会社への就職内定もきまった。
これから、自分が作った洋服を
着て、喜ぶ人の姿を
想像するだけで、期待に胸が高鳴った。
(ああ、ほんと、楽しみ♪)
朝から、友人に観光案内を
してもらい、その間、ずっと
将来の夢や恋バナに花を
咲かせながら過ごした。
楽しい時間は、あっと言う間に
過ぎ、友人と別れ宿泊している
ホテルに向かっている途中
不意に、冷たい夜風がヒューと
吹いた。
日が沈み、辺りは薄暗く
なっていた。ふと、空を見上げると
西の空には、薄っすらと
まだオレンジ色の雲が見えた。けれども
それを飲み込むように、真っ黒な
雷雲がどんどん広がり始めていた。
(やばい、一雨来るかも!急がなきゃ)
そう思って、足早で歩き出した。
ピカッ・・・・ゴロゴロ・・・
遠くで雷鳴がなり始めた。
そして間もなく
ポツ・・・ポツポツ・・
(あー、降ってきた)
栞は、走りだした。
雷雲はあっと言う間に
栞の頭上まで広がり
ザッーとアスファルトに
叩きつけるような雨が一気に降り出した。
ピカッ!ゴロゴロゴロ・・・
雷鳴もどんどん近付いてきていた。
(あー、もう、ついてない)
そう思いながら、更に急いだ。
本能寺跡地の石碑の前に
差し掛かった時、一人の男が
石碑をジッと見つめ佇んでいた。
(あの人、こんな雷雨の中、
何してんだろ?)とその男の横を
通り過ぎようとした時
男と一瞬だけ目が合った。
その次の瞬間、眩しいくらいの
閃光が当たりを照らしたかと思うと
危ない!!と言う声。
同時に自分の方へ伸びてきた手。
えっ?と思う間もなく
ドォォーーーーーン!!!
耳をつん裂く様な落雷の
音と地響きの衝撃に、栞は意識を失った。