第4章 〜再会〜
涙に気づいた、家康がそっと
親指で涙を拭い『泣かせて、ごめん・・』
と、雪姫の頬からスッと手を離し
悲しげに目を伏せた。
雪姫は、温もりが消えた頬に
少しだけ、寂しさを感じた。
『私の方こそ、すみません
泣かないと、決めておりますのに
泣いてしまい・・・』と。
家康は雪姫を見つめ
『泣かないって、どうして』と家康。
雪姫は、
『私にもよく分からないのです
いつの頃に、そう決めたのか。
でも、泣きそうになると
懐かしい声が聞こえる気がして・・・
・・泣いてはならぬ、強くあらねば
ならない・・約束だ・・と。』
と雪姫が、いい終わる前に
雪姫に伸びてきた腕が、ふわっと
雪姫を包みこんだ。
『えっ?』と不意を突かれ驚く雪姫。
『ごめん、ちょっとこのままで、いさせて』
と呟く家康。
家康は、ぎゅっと抱き締めながら
(なんで、桜奈とそっくりな
ことばかりの、あんたが桜奈じゃ
ないんだよ・・なんで・・なん・で・)
そう何度も心で繰り返し、涙を堪えた。
雪姫は抱き締められたまま、自分の
手を、家康の背中にそっと回した。
家康は、少し驚いたが、そのまま
抱き締めた。
そして、雪姫の肩をそっと掴み
自分の身体から離し
ゆっくり雪姫に顔を
近づけて行った。
だが、雪姫はとても寂しそうな笑みを
浮かべ、家康の唇に自分の指先
そっと押し当てた。
『家康様、家康様の瞳に映っているのが
私ではないことは存じております。
だから、これ以上は・・・
家康様の想い人が悲しまれます・・』
そう言うと、雪姫の瞳から
ひとしずくの涙が零れた。
雪姫は、家康の手をそっと自分の
肩からはずし、部屋から出て行った。
部屋から出て自室へ向かう間
雪姫は、何度も涙を拭っていた。
どんなに見つめ合い、抱き締めあっても
お互いの瞳に映るのは、別々の想い人。
それが、とても悲しくて、寂しくて
泣かないと決めているのに、涙が溢れる。
私にもかつて、ずっとずっと
側にいたいと願った愛しい人がいた。
顔も思い出せない、愛しい人・・・
貴方は、今、どこにいるの?
部屋に一人残された家康は、
自分の髪を無造作に掴み、頭を抱え
『何、やってんだよ、俺は』と
雪姫を傷つけてしまっていたことに
気づき唇を噛んだ。