第4章 〜再会〜
桜奈以外いらない・・・
そう思っていたはずなのに。
歌と紅葉があればいい・・・
そう思ったはずなのに。
『家康、どうした?お前の顔
最近、緩んでないか?』と秀吉が声をかけた。
『べ、別に・・・』
(お前、そんな分かりやすい奴だったっけ?)
事の発端は、書庫でのこと。
家康が本を返しに、書庫に行くと
棚の奥の方で話声がしてきた。
家康は、なんの気なしに会話の
する方へ行ってみた。
『!!』目にしたのは、雪姫と三成が
本について、語り合っているところ。
『雪姫様は、お好きな漢詩は
ございますか』と三成。
『そうですねー、私はやっぱり
《去者日以疎》が好きですわ、三成様は?』
『私は、やはり《偶成》でしょうか』
『《偶成》は三成様に、ぴったりで
ございますね!まるで三成様の
事を詠んでいるようですもの。
いつも、いつも時間を惜しんで
お勉強されていて、本当に
すごいと思います!』
『いえ、そんなことありませんよ。
あっ、この本もおススメですよ』
と言って、雪姫に本を渡した
雪姫は、興味深そうに本を開き
視線を落とした。
『《去者日以疎》も雪姫様に
ぴったりな詩だと思いますよ
だって、雪姫様の心
そのものでは、ないですか』
と呟くように言った。
だが、本に夢中になってしまっていた
雪姫の耳には、届かなかった。
本を読む雪姫に注ぐ、三成の視線には
儚く壊れてしまいそうなものに
そっと触れてみたい、けれど
触れたら壊しそうで怖い。
愛おしさと躊躇いが見えた。
その光景は雪姫への想いを
必死に押し留めていた家康の
心の結界に、ピシッと
亀裂を入れた。ピキッパリッと
亀裂は広がり、最後にカシャーンと
粉々に砕け散った。
そして、溢れる
二人を一刻も早く引き離したい衝動。
気づけば、家康は天敵とも呼べる
三成に、自ら声をかけていた。
絶対、自分からは寄って行かない
ようにしていた三成にだ。