第4章 〜再会〜
再会を果たした二人。
その後、城内でたびたび顔を合わせる
ようになっていた、家康と雪姫
初めて雪姫にあったあの日から
家康の心の騒つきは増すばかりだった。
宴の時見た笑みが
桜奈の面影と重なった。
あの瞬間はわからなかったが
日を追うごとに気づきはじめた。
雪姫が何処か桜奈に似ていると。
でも、例えどんなに似ていても
あの人は桜奈じゃない
しかし、想いとは裏腹に
城内で、雪姫を見かけると
自然と目が雪姫を追いかけ
探してしまう。
雪姫といると、いつもの自分では
なくなる。調子が狂う。そんな自分への
苛立ちも家康の中では膨らんでいた。
そして、これ以上踏み込めば
自分の中の桜奈が消えて
しまういそうな不安に襲われた。
だったら、いらない
俺は、桜奈以外いらない
そう言って、家康は
自分の心の中に、桜奈以外の
他に誰も入ってこないよう
結界を張り雪姫を拒んだ。
頑な態度は、雪姫にも分かっていた。
自分が拒絶されていることも
自分を遠ざけようとしていることも
信長様や千草にでさえ滅多に
見せたことのなかった笑みを
あの日、会ったばかりの家康様に
何故、向けてしまったんだろ?
いくら考えても分からなかった。
だだ、あの瞬間、家康様が
堪らなく愛らしく見えてしまった。
自分の腕の中に包みこんで
しまいたくなるほど愛おしく
見えてしまった。
そう、思ったら笑みが零れた。
何もかもを忘れてしまった私。
笑い方すら忘れてしまった。
笑いたくないのではない
笑い方が分からないのだ。
信長様が返してくれた
あの歌と紅葉
見つめると、込み上げてくる
温かなものに包まれる感覚。
竹千代様、貴方は一体
どこのどなた様なのですか?
歌と紅葉を見る度に問いかけるが
記憶は、その答えを教えはてくれない。
閉じてしまった記憶の中に
忘れてはいけない、いや
絶対に忘れたくはなかった
ものまで、自分が閉じ込めて
しまったようで、切なくなる。
そして、家康様に会うと
何故か、同じ切なさが
込み上げてきてしまう。
だから、
拒絶してくれていい
遠ざけてくれていい
私には、この歌と
紅葉があればそれでいい。