第4章 〜再会〜
宴が始まると、信長は雪姫を
広間に呼んだ。
広間に入ってきた、雪姫の
美しさに、どちらの家の家臣達も
息を呑み、ため息をついた。
その様子に、無自覚のまま一瞬
眉間にシワを寄せ、イラッとする家康。
信長は、その一瞬の変化を
見逃さなかった。
信長は、雪姫を隣に座らせ
挨拶させた。
美しい所作で、深々頭を下げると
『雪姫と申します。以後お見知り置き
の程、宜しくお願い申し上げます』と
顔を上げた。途端に、家臣達からは
熱に浮かされたような、深いため息が出る。
そして、何故か家康の不機嫌が
増していく。
そんな自分に気づいた家康は
何故そうなるのか、皆目見当がつかなかった。
ただ雪姫を見る度にざわつく
心だけを感じていた。
宴もたけなわになった頃
両家家臣からのヒソヒソ話が耳に入った。
ーー噂には聞いておりましたが
噂以上にお美しい姫君ですなぁ。ーー
ー ーそうであろう、そうであろう
織田家自慢の姫君だからのう。ーー
ーーだが、美しだけではない、
知性も勿論だが、琴を弾かせれば
歌うように奏で、舞を踊れば
花びらが舞っているように美しいとの
噂じゃ。もっと驚くのは、弓の名手
なのだ。ーー
ーーほほう、あの華奢な腕からは
想像もつきませぬな。ーー
ーーいやいや、その腕前は
そこらの家臣より上じゃよ。ーー
ーーそんな才色兼備な姫君ゆえ
信長様は片時も側から離さず
雪姫様もそのご寵愛を一身に受けている。
ゆくゆくは、正室になるだろうと
専らの噂じゃーー
ーーやはり、そうですか。信長様が
羨ましい限りですなぁーー
ーーただなぁ、残念なのは
あの表情だ。わしも信長様に
仕えて久しいが、雪姫様の
表情が変わるのを一度も
見たことがないーー
ーー笑みの一つでも、浮かべたら
そこいらの男は、天に昇りかねんがな
ハッハッハーー
これまで、今川側についていた
徳川家だったため、織田軍と
敵対することも少なからずあった。
その為、両家の中には禍根を
残すも者もいた。それゆえに
この同盟に反対する家臣も
少なからずいたのだった。