第4章 〜再会〜
歩きながら家康は、自分のとった
行動が信じられずにいた。
(何で俺は、名など聞いた・・・)
と、心の中でブツブツ呟きながら
広間へと向かった。
一方、すれ違っただけの桜奈
だったが、無自覚のまま、一度だけ振り返り
家康を見たのだった。
『雪姫様、如何されました』と千草に言われ
『いえ、なんでも・・』と
ポツリと言って口篭ったが
千草に先程の殿方はどなたかと尋ねた。
千草は一瞬驚いたが
『あの方は、此度、信長様と
同盟を結ばれることになった
徳川家康様にございます』と伝えた。
桜奈は、『そう・・』と
だけ呟き、着物の裾を翻すと
何事もなかったように歩きだした。
桜奈もまた、信長と千草以外
誰かに興味を示す態度を見せたことなど
これまで一度もない事だった。
その一部始終を光秀は柱の影から
眺めていた。これは興味深いと
ばかりに、不敵な笑みを浮かべると
その場を立ち去った。