第4章 〜再会〜
二人の心が粉々に砕け散った
あの日から、七年の月日が
流れた。
義元は、桶狭間の合戦で
信長に首をとられた。
義元の亡き後、力を失っていく今川。
竹千代は、好機とばかりに
今川からの独立を果たしていた。
そして、自分の城をとり戻し
『徳川家康』と名を変え
立派な戦国大名となっていたのだった。
その日は、信長と同盟を結ぶ
会見の為、信長の城に訪れていた。
広間に案内されながら廊下を
歩いていると、この世のものとは
思えない、息を呑むほど美しい姫君が
家康の方へ向かい歩いてきた。
家康達一行に気づくと、その姫君と付き人は
深々と一礼し、そのまま通り過ぎて行った。
一瞬のことだったが家康は
何故かその姫君から視線を外す
ことができずに、目で追いかけていた。
そして、案内係の者に
あの姫君はどなたかと尋ねた。
『ああ、あのお方は、雪姫様に
ございます』と案内の者は答えた。
家康のその行動に驚いたのは
後ろを歩いていた家臣達。
未だ、桜奈の笑顔だけが
脳裏に焼き付いて離れない
家康だった。
一日たりとも忘れられずにいた。
だからこそ、どんなに見目麗しい
姫君に会っても、他の大名から娘を
貰ってくれと熱心に言い寄られても
これっぽっちの興味どころか
煩わしい、迷惑と言わんばかりの
態度しか見せたことがなかったからだ。
それが、たった今、すれ違った
だけの姫君の名を自ら聞いたのだから
家臣達は、口を開けポカン
とするしかなかった。
すると、家臣達の視線にハッとし
家康自身も思いもよらぬ己の
とった行動に驚いた。
しかし、その驚きを誤魔化す
ように家臣達に
『何?なんか文句ある?』と
不機嫌そうに言い放った。
家臣達は、まるでシンクロ
するように一同が『いえ、いえ』
と、手と首を横に振った。
そして、すぐさま歩き始めた。