第15章 〜結実〜
栞からの手紙を読み終え
鷹介と千里は、栞の仕立てくれた
着物に袖を通した。縫製の細やかさに
我が子の裁縫の腕に驚き、たった3ヶ月で
ずいぶんと成長した我が子の
手紙が嬉しかった。
千里も二度と会えないとしても
栞が幸せなら、それが私達の幸せと
鷹介と微笑み合った。
双方の両親にも手紙と着物を見せると
千里と同じ事を言った。栞が幸せなら
それでいいと。
そして、季節は巡り、紅葉が色づき
始めた11月。
『千里、頑張れ!』
『んっっーーハァハァ』
『オギャーオギャー』
『おめでとうございます。可愛い女の子ですよ』
『ありがとうございます』
こうして、栞の妹が生まれた。
名前は、栞が姉妹のようだと
手紙で知らせてくれた女性の名をもらい
『桜奈』と名付けた。
スクスクと成長を遂げた桜奈は
栞とも似ていたが、雰囲気は
戦国時代の桜奈と良く似ていた。
月日は流れ、桜奈は、高校2年生
なっていた。
放課後、日直当番の友達を待ちながら
もうすぐ始まる期末試験に備え
歴史の教科書を読んでいた桜奈。
途中でウトウトし始め、いつのまにか
机に突っ伏して、うたた寝していた。
夢だったのだろうか、遠くで懐かしい
愛しい人の声が聞こえた気がした。
(桜奈・・・)
『んっ・・・家康・・様・・』と桜奈は
寝言を言った。
黄昏色に染まる教室。
風が教室のカーテンをはためかせる。
風の勢いで、教科書がパラパラと
めくられ、あるページを開いて止まった。
『桜奈、お待たせー!って寝てるし』
と桜奈の友達の詩織。
『んっん・・あっ、しぃちゃん
日直の仕事終わった?』
『うん終わったよー、桜奈勉強
してたの?ってか、寝てたよね』
『えへへ、歴史は、どうも苦手でね
すぐ、眠くなっちゃうのよねー』
『でも、何故か、戦国武将は大好き
なんだよね。』
『そうなの、小さな頃から
その時代の話だけは、ママが
お伽話みたいにしてくれたんだよねー』
開かれたページを見ながら詩織は
『そう言えばさ、織田信長の奥さんに
桜奈似てるよね、なんとなく』