第15章 〜結実〜
『うふふ、だって、栞様は
私のお姉ちゃんだもん。でもって
私の名前は家康の奥さんと
同じ名前だからね。だから家康が
戦国武将では、一番好き!』
『はっー、何言ってんだか。
はい、はい、桜奈の家康好きは
よーく知ってる!じゃ、帰ろうか?』
『うん、そうだね!』
校舎を出て、駅へと向かう桜奈と詩織。
『桜奈、駅前の新しい
パンケーキ屋さん知ってる?
あの激辛カレー店の隣に新しく
オープンしたんだって。
超、美味しいって噂よ!
これから食べに行ってみない?』
『行く行くー、スイーツ大好き!
太る心配がなかったら、いくらでも
食べれるのになー』と、肩を竦める桜奈
そんな、他愛も無い話をしながら
パンケーキ屋へと向かった。
『ここ、ここ、桜奈、入るよ』
桜奈は『はーい』
と、返事をし詩織が取ってに手をかけ
引こうとした時、すぐ隣の激辛カレー店の
ドアが開き、大学生らしき集団が出てきた。
その中に、金色の髪にふわふわの猫っ毛と
で翡翠色の憂いをおびた瞳、長い睫毛と
鼻筋の通った高い鼻。真一文字に結ばれた薄い唇
そのイケメンと桜奈は一瞬だけ目が合うと
時間が止まったように思えた。
その人の動き全てがスローモーションの
ように流れだす。その人は桜奈を
みて、少し驚いた表情で唇だけ動かし
何かを呟いたように見えた。
目が離せない桜奈は、全くの無意識で
『見つけた・・』と口にしていた。
『桜奈?』と詩織に話しかけられハッとし
『なんでもないよ、さっ、入ろ入ろ!
パンケーキ楽しみ!』と
ニッコリ微笑み、詩織の背中を押した。
『いやー、それにしても辛かったな』
『うん、でももっと辛くても俺はいける』
とそのイケメンは、話ながら一度
振り返り桜奈を見た。
桜奈も店の扉が閉まりかけた時
振り返った。
そして、また目が合った。
ーーーここに、再び、運命が動きだす。
何度、生まれ変わろうと
名前も姿形も変わっていようと
一目見た瞬間、どうしようもなく、惹かれ合い
お互いを手繰り寄せ合わずには、いられない。
それを『運命の赤い糸』と呼ぶのかも知れない
ーー完ーー