第15章 〜結実〜
『千里、今日はもう横になりなさい。
お腹の子にさわるといけないから、な?』
力無く頷く千里。
鷹介と千里は、警察には捜索願いは
出さなかった。
栞が就職する予定だった会社には
病気で入院していると伝えた。
そして、鷹介と千里の両親達だけには
古文書や、ワームホール、千里が見た
夢について、包み隠さず話した。
両親達は、一様に信じられないと
涙を流した。
それから、千里が妊娠したことも
報告すると、栞が寂しくないように
授けていってくれたのかもと、また泣いた。
それから瞬く間に、3ヶ月が過ぎ
栞の荷物の電話がかかってきたのだ。
もしかしたら、現代にいるのかと
一縷の望みを託し、鷹介が
荷物を受け取り帰宅した。
『ただ今〜』
『お帰りなさい、鷹介さん、それで
栞の荷物は?』
『ああ・・・』と、表情が曇る鷹介。
その表情から、一縷の望みは
打ち砕かれた。
『やっぱり、あの子、行ってしまった
んですね・・・』と千里。
『うん、そうみたいだ』と鷹介。
『千里、でも、そんなに悪い話ばかりじゃ
ないぞ。栞から手紙が届いたんだよ』
『えっ?』と千里。
そして、リビングで栞のバッグと
風呂敷包みを開いた。
そこには、仕立てられた
男性用と、女性用の着物が包まれてあった。
『千里、栞からの手紙だ』と
手渡された手紙を、千里は読みはじめた。
『親愛なる、パパとママへ
たぶん、この手紙を読んでもらえてるって事は
私は愛する人の元に、残れたことになります。
信じられないかも、知れないですが
3ヶ月前、私は時を超えてしまいました。
辿りついたのは、戦国時代でした。
目が覚めたら、本能寺の変の真っ只中で
私は、信長様を咄嗟に救っていました。
だから、少し歴史は変わってしまったかも
知れません。
助けたご縁で、そのまま安土城に
住まわせてもらう事になったのですが
最初は、パニックで不安でパパとママの
ところに帰りたくて、泣きました。』