第15章 〜結実〜
丁度、栞がワームホールに飲み込まれた
あの日、千里は病院を受診していた。
『おめでとうございます。今、8周目に
入ったところです。心臓の鼓動も確認
できましたよ。予定日は11月ですね』
と第二子を妊娠した事が分かった。
『やだ、もう、この歳で妊娠なんて
栞に言ったらびっくりするわね!』
プルルルル プルルルル
『あっ、鷹介さん?お仕事中ごめんなさい。
あのね、今病院行ってきたの、そしたら
8週目ですって。予定日は、11月よ』
『本当か!じゃ、クリスマス前には
4人家族になってるのか!楽しみだな!
気をつけて家まで帰ってよ。くれぐれも
転ばないでよ!』嬉しさと
心配が行ったり来たりの電話越しの鷹介。
『分かってるわよ、鷹介さん。
栞には卒業旅行から帰ってから話すわ
一旦、うちに戻るって言ってたから。
あの子、びっくりするわね!
だって、栞の子供でもおかしくない
くらい、歳が離れちゃうもの』
『ははは、そうだね。
とにかく、それでもきっと
あいつの事だから大喜びする
だろう?とにかくくれぐれも気をつけてよ
分かった!』
『はい、はい、心配症のパパさんだねー』
とお腹を撫でた。
次の日になり
家に電話がかかってきた。
今日も京都を散策する約束を
していたのに、栞が来なくて
何度、携帯にかけても連絡がつかず
ホテルに問い合わせたが
チェックインもしていなくて
もしかして、何かあったのではないかと
京都のお友達が心配して電話を
くれたのだ。
すぐに千里は、鷹介に連絡をいれた。
鷹介は、青ざめて帰ってきた。
『栞が居なくなった日に、京都で
ワームホールが観測されたと
報告が上がってきた。
もしかしたら・・・』と
苦しそうな表情になる鷹介。
『そ、そんな・・』両手で口を覆い
カタカタ震えだす千里。
こうなるかも知れない事は
夢を見た日から思っていた。
でも、どこかで、間違いだと
ずっと否定し続けてもいた。けれど・・・
『あの子、行ってしまったんですか?』
『たぶん・・・』
(なんであの子なの。
娘を栞を返して・・・お願い・・
お願いだから・・返して・・)
誰に訴えて良いのかも分からない
相手に向かって、心で訴え続けた千里。
そのまま、千里は泣き崩れた。
『千里!』と千里を抱きしめる
鷹介にも苦悶の表情のまま、涙を流した。