第3章 〜失われた光〜
助けだされてから7日目の朝
峠を越えた桜奈は
やっと目を覚ました。
寝ずに看病を続けた女中頭は
安堵するとともに
すぐさま信長に報告した。
桜奈の寝ている部屋に駆けつけた信長は
桜奈の、その異様さに息を呑んだ。
桜奈の虚ろな瞳には、光はなく
何も映してはいなかった。
能面のような無表情のまま
視線一つ動かす事もなく
呼び掛けても、一切の返答はなかった。
生きたまま、死んでいるかのようだった。
桜奈の心は、粉々に砕け散って
しまっていたのだった。
その姿はまるで、血の通わぬ人形のように
ただ横たわり、天井を見つめていた。