第14章 〜運命の赤い糸〜
顕如との戦は、力を持って潰して
しまうなら織田、武田、上杉の連合軍には
容易い事だった。
しかし、顕如の元に集まってきている
もの達は、時の権力者の犠牲になった
末端の農民達も数多くいた。
力で制すれば、やがて憎しみが
憎しみを呼ぶ負の連鎖が
続くのは目に見えている。
顕如の為に命をかけているのでは
なく、力のある者への不満と抗議が
原動力になっている者達が集まっている為
顕如の首をとったところで
その反骨の精神を挫くことが
できない事がこの戦を難しくしていた。
顕如にもそれは充分かっていた
例え自分が居なくなったとしても
この負のうねりは、後から後から
溢れて時の権力者に刃を向けるで
あろうことも。守るものがない者の
私怨に囚われた自暴自棄ほど
恐ろしいものはないのだ。
その身ごと他を巻き込み滅びゆくことに
なんの躊躇もないからだ。
なるべく禍根を残さず、命を奪わず
顕如を捕え戦意を喪失させる
為の策を信長を主に武将達は
練り上げた。
その策に添い、佐助の率いる忍達は
一向宗の中に紛れて込み噂を流す。
ーーおい、聞いたか、信長は武田と上杉と
組んで、俺らを待ち構えてるらしぞーー
ーーはぁ?ついこの前まで、戦ってたじゃ
ねぇかよ、なんで急にーー
ーーそれがよ、俺ら達を皆殺しにする為に
組んだらしい、それどころかこの戦に
加担したやつは、家族まで突き止めて
皆殺しにするって話だぞーー
ーーでもよ、俺らが戦で死んだら
身元なんてわからんだろ?死にたくは
ねぇが、一矢報いれるならそれも仕方ねーー
ーー俺も、おんなじ気持ちだ!負けるわけには
いかねぇからな。国にかかぁと娘残して
きたからよ。でもよ、捕まったやつから
加担したやつを吐かせて、突き止めてまで
皆殺しにするって話だ。さっき向こうに
潜り混んでたとか言うやつに聞いんだよ。
兵士達がそう話てるとこ確かに聞いたって。
そこまでしなくてもって、俺らを哀れんでたって。
お前、向こうの兵士に気の毒がられるって
どんだけだよ、本当にやりかねないと
思わないか?あの、信長ならよーー
ーーヒッ、怖いこと言うなよ。
でも、確かにあの信長ならやりかねんなーー
ーーそれでよ、俺は卑怯者だと思われて
構わねー、俺が死ぬのは怖くねぇけど
カカァや娘にまで危険があるなら話は
別だからよ、顕如様に悪いが俺は帰るーー