第14章 〜運命の赤い糸〜
その至福に包まれながら
桜奈は家康の胸に抱かれて
深い眠りの中へと落ちていく。
(どうかご無事で桜奈の元へ
お戻り下さい)と願いながら・・。
次の日の朝、家康の腕の中で目覚めた桜奈。
安土城に戻る身支度のため起きようとした。
しかし、抱きしめられたまま
起き上がれない。
後ろから抱きしめられるように
眠っていたので、家康の顔は見えなかった。
自分の背中越しに聞こえる寝息と
微かに桜奈の首筋にかかる息
で家康が眠っていることが分かった。
桜奈は家康を起こさないよう
回されている腕をそっと外そうとしたが
全然、外れない。ちょっと力を入れて腕を
解こうとしても、びくともしない。
まさかと桜奈は家康が狸寝入りで
自分の反応を面白がっているのでは
ないかと思い静かに声をかけた。
『家康様、起きてらっしゃるでしょ?』
『スー、スー』と寝息だけが聞こえる。
(やっぱり眠っておられるのかしら?)
そう思い桜奈は、確かめようと
ゆっくり身体の向きを変えた。
家康は、やはり眠っているようだった。
桜奈は、家康を見つめ
目元にかかったフワッとした猫っ毛を指で
そっとかかき分けると家康の端正な顔立ちと
長い睫毛が桜奈の目の前に現れた。
桜奈は、愛らしいものを
愛でるように優しく穏やかな笑みを
浮かべ家康を見つめる。
(いつも見ているから、もう見慣れても
いいはずなのに、やっぱりドキドキして
しまいますわね///)とドキドキしている
自分が少し恥ずかしくなり、そんな自分に
クスっとし、可愛らしい笑みに変わる。