第14章 〜運命の赤い糸〜
ほんの少し前に、奇跡的な事が
起こったとは思えない程
皆、淡々と顕如討伐に向けた
策を練り上げていた。
明日からまた、戦が始まる。
桜奈と栞は、明日朝早くに
安土城に戻る事になった。
その夜、家康の天幕では
桜奈が家康の傷の
手当てをしていた。
出血は止まり、傷口も
だいぶ塞がりかけている。
包帯を巻きながら桜奈は
また明日から戦いに身を投じる
家康の身を案じ
『家康様、まだ傷は完全では
ございませぬゆえ、無理は
なさらぬようにして下さいね』
と言うと
『うん、分かってる』と家康は答えた。
それから包帯を巻き終えた
桜奈の手を掴むと引き寄せるように
自分の膝の上に乗せた。
そして、桜奈を抱きしめると
家康は、桜奈の耳もとで
『これから、桜奈の全部を俺に
ちょうだい・・・』そう言うと
優しい翡翠色の瞳が桜奈を見つめた。
桜奈は、耳まで真っ赤になり
鼓動が高鳴る。けれど、家康から
目が離せないまま、恥ずかしそうに
『桜奈の全ては、家康様のものに
ございます』と答えた。
そう言われた家康は『桜奈、愛してる』
と言うと桜奈の唇を奪った。
今までにない様な、激しく深く
それでいて蕩けるような口付け
桜奈から吐息が漏れる
『あっ・・』
家康は、唇から首筋へと
桜奈の温もりを確かめるように
唇を這わせて行く。『んっ・・』
時折、漏れる桜奈の吐息。
いつの間にか、帯は外され、はだけた
着物から桜奈の白い透き通る
ような肌が少しずつ、あられもなく
外気に晒されて行く。
そして、生まれたままの姿に
なった桜奈の身体に
家康の口付けの雨が降り注ぐ。
口付けの雨を吸い込み桜奈の
身体は、潤い、色づく。
まるで、ゆっくりと花弁が
開いて行くように、桜奈は
大輪の花となり、咲き乱れ
愛される喜びに、儚げに鳴く。
やがて、優しい翡翠色の瞳に見つめ
られながら、家康を受け入れた。
『・んっ・・はぁ・家康様』
『桜奈、俺の可愛いお姫様
一生、離さない』
お互いの名を幾度も呼び合いながら
二人は、身も心も一つとなり
どちらの温もりとも分からぬほどに
溶け合い、至福に波にのまれていった。