第14章 〜運命の赤い糸〜
引きずり込まれそうな
強い吸引の風がワームホールに
向かって流れ出した。
信長は、栞をしっかり抱きしめ
引きずりこまれないよう踏ん張った。
(栞は、絶対に離さぬ!)そう思いながら。
栞は、ワームホールの中に
現代から持ってきた鞄と
それに括り付けた風呂敷包みを
『お願い!パパとママに届けて
私は、ここで信長様と生きていく!』
と放り込んだ。
(栞、!二度と離さぬ!)
信長は、いっそう強く栞を抱きしめた。
すると、ワームホールは
シュッと一気に縮んで消え風が止んだ。
次の瞬間、離れた場所にドォォーーーンと
耳をつん裂く音と共に落雷で地響きがした。
閃光の眩しさから解放されると
皆が見つめていた先に
信長と栞の姿が確かにあった。
『栞さん!』桜奈は
泣きながら栞に駆け寄ると
栞も信長の腕からすり抜け桜奈に
走り寄りお互いに抱き合った。
『桜奈さん、私・・・』
(ここに、残れた)
泣きながら栞は言った。
『栞さん、こちらの世に居て
下さるのですね嬉しい!!』
そう言って、ずぶ濡れの中
お互いの温もりを確かめ合う様に
抱きしめあった。
すると、不意に後ろから冷気が漂う。
『栞、貴様〜、わしよりも先に
桜奈と喜びを分かち合うとは
どう言う了見だ!』と怖い目をしている。
『ひっ!』と顔が引きつる栞。
慌てて桜奈の後ろに隠れた。
『桜奈、貴様も貴様だ
わしよりも先に栞を抱きしめおって!』
と今度は桜奈を睨んだ。
申し訳無さそうにする桜奈
そこに家康が来て、『はい、はい』と
栞の信長のところに、押しやり
桜奈を自分の腕の中におさめた。
『はい、これでいいでしょ。
信長様、これから俺と同じ苦労を
するんですね。信長様と俺の恋敵は
ある意味、その辺の男より手強いで
すから、覚悟しといたほうがいいですよ』
と含み笑いをした。
『ああ、そのようだな』と信長も
ニヤリとする。そう言って栞を
抱きしめた。
桜奈と栞は、キョトンとして
何を言っているのか分からない
様子だった。
皆がそれぞれ集まってきて
一様に安堵の表情を浮かべていた。
雨はいつのまにか上がり
青空が顔を出す。
佐助と幸村は一旦戻り
信長達も、顕如討伐の軍議に備えて
着替えに天幕へ戻った。