第14章 〜運命の赤い糸〜
『ふふ、なんでもない
とにかく、二人とも元気でね!』
『ええ、栞さんもお元気で』
『栞も元気でな』
そう言って、家康と桜奈のもとを
後にした。
そして、一番別れが辛い人の元へ向かった。
荷物をとりに信長の天幕に
訪れた栞は、信長の前に正座し
『信長様、今、同じ未来からきた
佐助君から、後一刻もない間に
通路が開くと知らされました。』
『何!誠か!』
と栞の側による信長。
『はい。これでお別れになります。
本当に本当に今まで、ありがとうございました。
お世話になりました。信長様に出会えて
恋をして、安土で皆と過ごせて
私は・私は・・・本当に幸せでした・・・
この時代にきて、本当に良かった』と
涙を流し、無理に微笑むと
信長の胸に飛び込み縋り泣いた。
信長もしっかりと抱きしめる。
(くっ、己がそうせいと指図した
くせに、心が揺れる。情けない。
これ以上栞を惑わしてはならぬ)
栞を自分から離し、頬を包むと
親指で涙を拭う。
『栞、行け。振り返っては
ならぬ。元の世で必ず幸せになれ』
そい言うと栞を、立ち上がらせ
荷物をもたせると、背中をそっと押し
栞を外へ向かわせた。
栞は、振り返るなと
言われたが、数歩歩くと
荷物を、投げ出し信長の
元へもどり、信長を抱きしめた。
そして、信長の頬を自分に引き寄せ
自分から口付けをした。
信長もそれに応えるように
苦悶の表情を浮かべ
栞をしっかり抱きしめたのだった。
『信長様、ありがとう』そう
耳元で囁くと、栞は泣きながら
満面の笑みを信長に向けた。
涙を拭い、荷物を拾うと
前を向き歩き出した。
拭ったはずの涙は、後から
後から溢れてくる。
(泣くな栞。これからが勝負。
私の想いで、自分の選びたい未来
を選ぶんでしょ?泣いてる場合じゃ
ないよ!)
そう自分に言い聞かせ、涙をぬぐい
顔を上げ、真っ直ぐ前を見据え歩いた。
そして、佐助の元に到着した栞。
『佐助君、準備はできたよ!』
そう栞が言う頃には、空はだいぶ
暗くなり始めていた。
事情を、全て佐助から聞いていた幸村は
『栞も、帰りたくないんだろ?
だったら、荷物だけその
わーむほーるとか言う
のが開く場所に置けば、勝手に
飲み込んでくれねぇの』と
もっともな質問をした。