第13章 〜君とでなければ〜
謙信は、自覚のないまま
どんどん桜奈に惹かれていた。
(信長の首さえ取れれば用済みと
思うたが、このまま生かして側に
おくのも一興かもしれぬな。
いい退屈しのぎになるやもしれぬ)
一方、桜奈の身を案じながら
馬を走らせていた家康。
先程から、気配を感じる。
馬を休憩させる為沢の
ところで馬を降り、馬に
水を飲ませながら
辺りを警戒していた。
すると、沢の向こう岸から
男が二人出てきた。
家康は、柄に手をかけ
『お前ら、何者だ』と聞いたが
一人は、見たことのあるやつだった
『お前、武田の家臣の真田幸村だな!』
そう言うと、『やっぱり、わかるよな』と
呑気なことを言った。
家康が眉をひそめ、今にも刀を抜こうと
した時『徳川家康公、我らは、戦いに
きたのではございません。桜奈さん
を助ける為に協力したくてきたのです』
『助けにって事は、桜奈の居場所を
知ってるの?知ってるんなら
あんたらが、攫ったってことでしょ?
攫っといて助けたいなんて
何わけわかんないこと言ってんの?
俺、急いでるから、邪魔するなら
切るよ。』
警戒を解かない家康に
佐助は、説得を続けた。
『僕は、栞さんの友人でも
あるんです。栞さんにとって
桜奈さんは、親友ですよね。
栞さんの友達なら僕は
助けないわけには、行かないんです』
『栞の友達って、どう言う事?
栞にこの時代で、安土以外に
友達がいるばすないんだけど』と
(栞が間者だなんてあり得ないのは
あの能天気さでわかる。内通なんて
もっと無理だろう、すぐ顔にでるし)
と思いながら思い当たる事があった。
『あんた、まさか、未来から
栞ときた人?』
佐助は、内心驚き
『何故、それを!!』と短く返した。
『栞が、みんな教えてくれたんだよ。
でも、本当にあんたが未来から来たやつか
信用できない。まして、桜奈を攫った
謙信と関わりがあるやつなら尚更ね
証拠になるような未来の品、なんかもって
ないの?』
『証拠ですか・・・あ、これなら
いかがですか?』と、佐助は
懐から、ボールペンを出し
家康に向かって投げた。
家康は、栞の物とは柄が
違っていたが上の部分を
カチっと押すと芯が出てきた。
(栞が持っていた物と同じ仕組み
やはり、あの眼鏡、未来人で
間違いないらしい)そう思った。