第12章 〜それぞれの覚悟〜
翌朝
前線に向かう前の家康に
傷の手当てをしていた。
止血の薬草が、効いたのか
出血は、おさまっていた。
また、消毒し、止血の薬草を
塗り、傷薬を当て包帯を巻く。
動きで外れてしまわないよう
少しきつめに巻いた。
『家康様、きつくはございませんか?』
そう聞く桜奈に
少し腕を動かし、確認すると
『うん、大丈夫だ。ありがとう』
と言い着物を整え、また甲冑をつけた。
『桜奈が、持ってきた
傷薬もあるし、後は大丈夫だ。
明日、三成が戻る時に
一緒に帰って、分かった?』
『はい、承知致しました』
『じゃ、行ってくる』
『はい、お気をつけて』
そう言うと、家康はまた前線へ指揮を
取るため出発した。
桜奈は、ここにいる間に
出来ることをと思い、薬を調合し
補充したり、食事の準備など
休む間もなく動いていた。
陣営には、僅かな警備兵しか残されて
いなかった所に『敵襲!!』と、声がし
残っていた兵が全てそちらへと応戦に向かった。
『桜奈様、急ぎ天幕の中へ
身を潜めていてい下さい』と
桜奈の護衛に当たっていた兵も
応戦に向かった。
桜奈は急いで、天幕に走ったが
目の前に、二人の忍びが現れた。
『何者!私に近づくでない』と
懐刀を取り出そうとしたが
抵抗する間もなく薬を、嗅がされ
意識を失った。(家・康・・様・・・)
前線で指揮をとっていた家康に
一瞬、桜奈の声が聞こえた
気がした。そして、胸騒ぎが走った。
(今日の敵の動きは、おかしい
まるで、時間稼ぎでもしているように
煮え切らない動きだ)
三成も険しい表情で
『今日の敵陣の動きは、おかしいですね
何か別の意図か策を図っている気が
します』
その通りだった。
まるで家康と桜奈の
距離を広げるように、呆気なく後退していく
敵の動きに、少しこちらが踏み込みと
また反撃し反撃し返すと、また後退する。
すると、家康の家臣が青ざめ
報告にきた。
『申し上げます。先程、本陣が
奇襲され桜奈様が
何者かに攫われたとのこと
にございます!!』
『何!』家康は、動揺した。
しかし、自分がここを離れる訳には
いかない。
『三成、悪いが桜奈の捜索に
当たってくれ、頼む』と三成に頭を下げた。
『承知致しました。』