第12章 〜それぞれの覚悟〜
桜奈が落ち着くまで
抱きしめいた家康。
『桜奈、お願いだから
無茶しないで。俺も大人しく
桜奈に手当てしてもらうから
血が止まったら、すぐここを
離れて。分かった?
俺も桜奈に何かあったらと思うと
心臓がいくつあっても足りないから』
桜奈は、涙を拭い家康を
見上げると『それまでは、お側にいて
いいのですか?今お側にいれるなら
夫婦になれなくても良いと申し
ましたから、口にした事を守る覚悟は
できております。お側にいられる間は
しっかり傷の手当てはさせて頂きます。』
と切ない顔をする桜奈。
(勘弁してよ、本気だったのかよ
ほんと、心臓に悪いよ)
『はーっ』と深いため息をつく家康。
『あのさ、それまでじゃない。これからも
どこにも行かせるつもりも、ましてや
誰にもやるつもりもない。
桜奈は一生俺の側に居てもらわないと
困るの!分かった?
今度、そんなこと言ったら本気で怒るよ。
ただ戦さ場には長居させないって
意味だから。』と、目元を赤くしながら
家康は、言った。
桜奈は、その言葉にぱぁっと
顔がほころんだが、次には泣き顔に変わり
今度は、嬉し泣きを始めてしまった。
『桜奈の気持ちは、もう分かったから
泣き止んで、泣き虫は嫌われるんでしょ?』
と、家康は、おでこ優しく口付けした。
桜奈は、家康を見上げ
涙を拭うと、もう泣きませんと
言うように微笑んだ。
だが、家康の心配を嘲笑うかのように
計らずも誘い出されるように
戦さ場に来てしまった桜奈の身に
また、危険が迫っていた。
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『ご報告いたします。
戦さ場にて、信長の正室候補と
言われる女子を確認致しました。
何故、戦さ場に来たかは不明ですが
正室候補ともなれば、信長も
黙ってはおらぬかと。
信長を引きずり出す、千載一遇の
機かと存じます。』
『ほほぅ、それはなかなか面白い。
退屈で死にそうな俺に
面白い余興が、用意されたか。
その女子を俺の前に
直ぐに連れてこい、良いな』
そういって、怪しく光る刀を
舐めるように見つめる男
『はっ、手はずは既に
整っております。明日にでも』
『佐助には、悟られぬようにせよ
あやつは、こう言った余興には
口うるさいでの。』
『はっ』