第12章 〜それぞれの覚悟〜
翌日の朝早く、三成と共に
桜奈は出発した。
次の日には陣営に到着した。
家康は、傷口からの出血で体力が削られ
熱を出し、天幕で眠っていた。
桜奈は、家康様のところに
行くと『また、ご無理なさったのですね』
と、持ってきた医材で手当てを始めた。
傷口は開いていて、出血も続いていた。
桜奈は消毒すると、止血の薬草を
塗り込み、その上から傷薬を布につけ
貼り、包帯を巻いた。
処置の痛みで、目を開けた家康は
あり得ないものでも見たかの
ように、目を見開き驚いた。
『っ!!桜奈、なんでここに!!
三成、どういう事だ!』
と、三成を険しい顔で睨んだ。
『申し訳ございません。傷の具合が
よろしくないので、このままお身体に
障ると、戦そのものに影響が出かねないと
判断し、信長様に報告に上がったところを
桜奈様に聞かれてしまいました。』
『ったく、余計なことを!!
俺は、大丈夫と言ったはずだ!!』
と怒りを露わにした。
『家康様!三成様を咎めないで
下さい!ご無理を申し上げて、
連れてきて頂いたのは、私でございます。
咎めるなら、私だけにして下さい』
桜奈もまた、厳しい表情で
家康にそう言った。
『ああ、もういい、ちょっと来て』
不機嫌な顔で桜奈の手を掴むと
天幕の外に連れ出しひと気のない場所に
移動すると
『なんで、戦さ場なんてきたのさ
何かあったら、どうするつもり?』
と桜奈を詰問した。
『ご心配も、ご迷惑をお掛けして
いることは、重々承知しています。
それでも、家康様が心配でわがままを
言ったのです。』
『そんな、無茶ばっかりされたら
この先、心配で怖くて、夫婦になっても
やっていけないよ!!』心配が怒りに変わり
天邪鬼が顔を出した。
桜奈は、泣き出しそうな
ほどショックな顔をしたが、すぐに
涙をこらえ、真剣な眼差しで
冷気を放つように淡々と話始めた。
『家康様がこんな私とでは
夫婦になれないと申されるのでしたら
それでも構いません。
例え、破談になったとしても結構です。
けれど、今は、傷の状態が落ち着くまで
私は、お側を離れるつもりは
一切ございません。それすらも
ご迷惑と言うのなら、今すぐに
ここを立ち去り、二度と再び
お会いすることもございません。』