第12章 〜それぞれの覚悟〜
『はーっ、貴様がそう言うだろうと
思って、内密にしようとしたのじゃ。
知られたからには、貴様は絶対
曲げはせぬであろう。本当に頑固
じゃからのう。
仕方あるまい。桜奈行くことを許す!
行って、あの大馬鹿者をわしの代わりに
懲らしめてこい!
わしか行くより、震え上がるであろう』
そう言って、桜奈の肩に
手を置き、ニヤリとした。
桜奈は、真っ直ぐに
信長を見つめ『ありがとうございます。』
と、深々と頭を下げた。
『三成、後は任せた。くれぐれも注意せよ』
『はっ』と三成。
『信長様、三成様、わがままを
申しまして、申し訳ございません。
三成様、宜しくお願い致します』
『桜奈様、出立は明日の朝
早くになります。それまでに
ご準備をお願い致します。』
『畏まりました。ではすぐに準備致します』
と広間を後にした。
『ったく、こうと決めたら絶対に曲げない
芯の強さも如何なものか』と信長は
呆れていた。
『流石、信長様がお育てになられた
姫君様ではございませぬか。
信念を貫く強さは、信長様譲り
ではないでしょうか?』と三成は微笑み
『では、私も準備に取り掛かります。
これにて、失礼致します』と退席した。
(全く、わしはあれほど頑固ではないわ
どう見ても、鷹山そっくりではないか)と
懐かしむように、フッと笑った。
桜奈は、準備の為に自室に戻り
必要な医材を掻き集めていた。
(消毒と血止めの薬草も必要ね
後は・・・)とパタパタと動き回っていると
『桜奈さんいる?』
『あっ、栞さん?どうぞお入りになって』
襖を開けた栞は、色々な物が
畳の上に並べられているのを見て驚いた。
『桜奈さん、これどうしたの?!』
『家康様が、戦さ場で怪我をされました
私は、明日、戦さ場に行きますので
その準備をしておりました。』
『戦さ場に!ほんとに行くの?桜奈さん』
心配し、焦る栞。
桜奈は、ニコッとして
『栞さん、大丈夫です。家康様の
傷の具合を見て、すぐ戻って来ますから。
でも今は、ちょっと休憩致します。
栞さん、夕餉をご一緒しませんか?』
『私もそう思って、持って来たよ』
とにんまりする栞。
『さぁ、冷めないうちに食べよう』
と二人は一緒に夕餉を食べた。