第12章 〜それぞれの覚悟〜
予備の薬草分全てで
傷薬の調合を終えた桜奈は
風呂敷包みを持って三成を探していた。
既に夕刻近くになっていた。
途中、夕餉の支度に向かおうと
していた栞に会った。
『栞さん、三成様をお見かけ
しませんでしたか?』
『ああ、三成くんなら、今
信長様に報告に向かったよ。
たぶん広間かな?』
『ありがとございます。
広間にいってみますね。』と
栞と別れ、広間へと向かった。
広間に近づいた時、信長の
怒鳴り声がした。
『どう言うことだ、三成!!
あやつの傷は、完治していなかったのか?
わしを謀っていたのか?!』
『家康様の、腕の傷は、表面は
塞がっていたものの、中はまだ
完全ではなかったようです。
そこに運悪く、敵の矢が腕を掠め
傷口が開き、出血が続いているご様子です。
大事ないと、口止めされましたが
このまま、傷の状態が悪化すれば
お身体に障ると思い、ご報告に
参りました。』
『あの、大馬鹿者が!!』信長は、
ギリっと奥歯を噛み締めた。
『今、桜奈様に傷薬の調合を
お願いしております。それを持って
明日、物資と共に家康様にお届け
致します。』
『この一件、桜奈には悟られ
ぬようにせよ。分かったな。』
『はっ!』と三成は言い
広間から出ようと襖を開けると
そこに青ざめ強張った顔をして桜奈が
立ち尽くしていた。
『桜奈様!』三成は、動揺した。
『チッ』と信長は、舌打ちすると
『桜奈、話を聞いておったのか?』
と問われた。
『申し訳ありません、三成様に傷薬を
お渡ししようと、探しておりましたら
信長様の怒鳴り声がしたもので
何かあったのではと、そのまま
立ち尽くしてしまいました。』
『三成様、今の話は、本当でございますか?』
『はい、家康様の傷が開き、出血が続いて
います。家康様は、気丈に、戦の指揮を
取られておりますが、このまま無理を
続けると、お身体に障る可能性が
あります。』
『そんな・・・』と泣きそうだった
桜奈は、急に険しい顔になると
意を決したように信長の前に座り
『信長様、お願いがございます。
女子が戦さ場になど以ての外なのは
百も承知にございます。
けれど、どうぞ私を家康様の
お側に行かせて下さい。
お願い致します』と
頭を擦り付けるように土下座した。