第11章 〜決意〜
『栞さん?急にどうして、そんな事を?』
『いや、信長様の目指しているのが
平和な世だって言うのは分かるんだけど
天下布武ってそれを指してる言葉でしょ?
でも、具体的な意味をそう言えば
知らないなと思って』
『そうでしたか。
天下布武とは力の圧力によって
乱れた世を平定すると思われてしまいがち
ですが本当の意味は違います。
武と言い字は戈(ほこ)を止めると
書きます。武器を持った戦いを止めて
それを広げていき、戦いのない
世を作ると言う意味が本来の
天下布武なのです。
信長様は、ご自分がどれ程の悲しみや
憎しみの上に座しておられるか
痛いほど、お分かりなのです。
優しい方ですからね。
栞さんが信長様の部屋から出て行かれた後に
栞さんのいた世界について聞かれました。
とても平和な世界だと話たら、栞さんの
生まれた世が平和で、嬉しかったかも
知れないですね。この先の世が平和だと
知ることができたことも。
その後にそれなら尚更、元の世に
帰る方が良いと仰ってましたから。
まだまだ、ここは戦乱の世ですから
明日をも知れない、この地にいて
大切な人を危険に、晒すくらいなら
誰よりも大切な人だからこそ
平和な世で幸せに暮らして欲しいと
そう思われたのではないでしょうか?
例え、自分の手で幸せにすることが
叶わないとしても、ただただ栞さんの
幸せを願って。私はそう感じました。』
すると、栞の涙腺はまた崩壊した。
止めどなくまた涙を流す栞。
『あー、私ったら、ごめんなさいせっかく
落ちついたのに、また気持ちを、掻き乱す
ような事を言ってしまったのですね』と
栞を抱き寄せ、抱きしめながら
宥めるように言う桜奈。
(違うの桜奈さん、そんなに信長様に
想われていたのに、私は自分の不安しか
考えてなかったんだよ。そんな自分が
今更ながら情けなくて悔しいんだよ。
信じれなかった自分に腹が立つ)
言葉にはならず鳴咽が漏れる。
『栞さん、まだ未来への通路が開くまで
今少し、猶予がありますよね?
このまま、信長様が選んで下さった
道を進むもひとつ。
けれど、ギリギリまで悩んで、もがいて
栞さんご自身の意思で進む道を
お選びになった方が、どちらを選ぼうと
そこには自分で決めた覚悟がある。
その方が、悔いは小さくなる
ような気がしますよ。』