第10章 〜ありふれた日々〜
『栞さんには、人を和ませ癒す力が
おありになります。私もその力に癒され
こうして幸せの中に導いて頂いた一人です。
信長様もそれはよくご存知で、だからこそ
御心を見せ、許せるただ一人のお相手として
栞さんにどうしようもない程、惹かれたの
だと思います。信長様を癒し救えるたった
一人の存在が栞さんなのだと
私も信じております。』
『桜奈さん、ありがとうそんな風に
思ってもらえてたなんて照れちゃうけど
凄く嬉しい。私の知らない私の
部分をちゃんと見てくれている人が
いるって幸せだよね。』
『ただ、信長様のお側でずっと支えていって
欲しいと願うのは私のわがままです。
国元で栞さんの帰りを心配しながら
待ち侘びるご両親を思えば胸が痛みます。
私は、どんなに会いたくても父にも母にも
もう二度と再び会うことは叶いません。
そんな思いを、栞さんに味あわせ
たくなどございません。
信長様もきっと、そう思うはずです。
栞さんが、一番幸せだと思う事を選んで
下されば私は、その幸せをただただ
願うのみにございます。
栞さんと出会い、私の人生は変わりました。
栞さんから、幸せを頂きました。
だから、今度は栞さんがお幸せになる為に
私にできることがあるなら尽力したい。
そう願っているのです』と栞に微笑む。
『桜奈さん、ありがとう』
と栞は、ポロポロ涙を流した。
(私の事を、こんなに思ってくれる人がいる。
私の方こそ桜奈さんに出会って
人生変わったんだよ。前よりずっと
強くなれた気がするもん。
やだな・・やっぱり離れたくないな・・
信長様や桜奈さんの側にずっと居たい
皆と離れたくない・・でも・・残る勇気も
・・今の私には・・・)
『ううっ・・』
栞は、答えの出ない悩みに
答えを出せない自分に、もう自分で
どうしていいのか、分からず涙が
溢れた。
桜奈は、我が子でも抱きしめる
ように、栞をそっと抱きしめて
背中をさすった。