第10章 〜ありふれた日々〜
『栞さん、ずっと苦しんで
いらしたのですね。気づいて
あげられなくて、ごめんなさい』
ひとしきり泣いた栞は
『ううん、私も心配かけたくなくて
頑張って、そんな素振りなんて
見せないようにしてたんだよ。
でも、今日帰ってきたばかりの
桜奈さんにはすぐに
バレちゃった。桜奈さんに
バレたってことは、私が何かで
悩んでるって事に、信長様はもう
とっくに気づいてるよね・・・』
桜奈は困った顔だけして
それには、答えなかった。
『実はね、あと一ヶ月しない間に
国元から迎えがくる事になってるの。
だからそれまでにちゃんとどうするか
決めなきゃいけなくて。
桜奈さんが言った通り
信長様は、私が決める事を尊重
してくれると思う。
ありがとうね桜奈さん
ちゃんと向き合う勇気もらった』
と、栞は、微笑んだ。
『良かった。でも猶予がない為にこれほど
お悩みになってらしたのですね。栞さんが
お嫌でなければ、信長様にもご相談されては
如何ですか?
好きな人が何かを抱え悩んで苦しむ姿を
何も言ってもらえず側で見ているだけでは
信長様もお辛いと思います。
好きになった人の力になりたい
助けになりたいと思うのは
どんな人でもそうだと思いますから。
ましてや、優しい信長様の事です。
きっと、栞さんから話てくれるのを信じて
黙って待ってらっしゃるのだと思います。』
と桜奈は言った。
『うん、信長様の事だからきっと
そうだよね・・・
自分でちゃんと信長様に話てみるよ
それまで国から迎えが来ることは
桜奈さんと二人だけの秘密に
しておいてもらっていい?』
『はい、お約束いたします』と、
子供のように指切りげんまんをして
二人で微笑み合った。