第10章 〜ありふれた日々〜
『桜奈さん、家康との祝言は
いつぐらいになるのかな?』と、栞は
聞いた。もし間に合うなら、絶対
出席したかったからだ。
『そうですね、早くても半年は
先になるかと思います』
『えっーそんなに先なの?』
『そうですね、まだこの前の
事が全て解決したわけでは
ないみたいですし、また
近々、大きな戦があるかも
知れないみたいですし』
と不安そうな顔になる桜奈。
『そっか、桜奈さんも
家康の事考えたら心配だよね』
と言いながら、お茶を一口飲んだ
『栞さんは、信長様のご正室に
なるお気持ちは、ないのですか?』
と言われ、お茶を吹きはしなかったが
『ゲホッ、ゲホッ』とむせた。
『大丈夫ですか?栞さん』と桜奈が
栞の背中をさすった。
『//びっくりしたー、もう桜奈さんが
変なこと言うから、そんな正室なんて
あるわけないよー』
『えっ、だって、信長様だって栞さんを
お慕いし、両思いなのに?信長様の
ご正室がなることがお嫌なわけでは
ないですよね?』
『うん、信長様は大好き。
ずっとお側にいたいよ。
でも天下取りの武将の妻なんて
私には荷が重い。
だからって他の人を信長様が正室に
迎えたら、それは、それで
耐えられないと思うんだ。
桜奈さんだって、家康が
側室を持ったら嫌でしょ?』
『家康様がご側室を迎えたら・・・?』
と想像しみるみる、ムッとした顔になり
『私、一生、口をききません!』と言った。
『やだ、桜奈さん、可愛いい』
とクスクス笑う栞。
『でしょ?自分は隣で支えていく
自信なんてない。けれど別の人が
隣で信長様を支えて、愛される
姿なんて絶対見たくない。
見るくらいなら、離れて遠くへ
行って見ないでいる方がまだまし』
そう言って、栞は寂しそうな顔をした。
『栞さん・・もしも、もしもですよ。
信長様の正室になる自信がないから
信長様からの申し出をお断りに
なるとしたら、国元に帰られる
おつもりと言うことですか?』
『うーん、もしも、そうなったらね。
そもそも、申し出があるなんても
思ってないし、もしあっても今の
私じゃ無理かも・・そしたら
国に帰ろうかなって正直、思ってる』
どんどん悲しげな顔になる栞。