第10章 〜ありふれた日々〜
信長様のところに挨拶に向かった二人
『この度は、ご迷惑をお掛けしました
桜奈のお陰で、傷も完治いたしました。
ご配慮、ありがとうございました。』と家康
が言うと、続いて
『信長様、ただ今戻りましてございます
長らく、留守にいたしまして、ご迷惑を
お掛けしました。本日よりまたお世話に
なります。宜しくお願い致します』と
桜奈も挨拶した。
信長は、『あい、分かった』と言うと
家康に、『何とか、耐えたようだな』と
言うと『はい、何とか』と家康は返した。
二人が何の話をしているのかさっぱり
わからない桜奈は
『家康様?何を耐えていらしたのですか?
まさか、まだ痛みがあるとか?』
と、的外れな事を言うと
信長は、クックックと笑い
『桜奈、聞いてやるな
家康が気の毒であろう』と意地悪そうな
笑みを浮かべた。
家康は、『はっー』と深いため息をつき
『では、これで失礼します』と退室していった。
桜奈は、『私、何か気に障る事でも
言ってしまったのでしょうか?』
と気に病むと、『いずれ、分かるから
気にするな。しかも、すこぶる下らない
話じゃからの』とまた笑った。
『そうですか、それなら
宜しいのですが・・・』
『時に、信長様、この度は
栞さんへの想いが成就されたと
お聞きしました。誠に喜ばしい
限りと、私も心から喜んでおります。』
『ふっ、そうか。早耳じゃのう
栞とは、本当に仲がよいのだな。
家康が栞を、恋敵と思う気持ちもわかるわ』
『栞さんは、私には姉妹にも等しい
存在になっておりますゆえ』とニコッとした
そして、直ぐに真面目な顔に戻ると
『ただ、気になることがございます。
信長様と、想いが通じ合い、お幸せそう
ではあったのですが、一瞬ですが今日は
お顔が曇りました。
何かあったのかと気になりまして
あと、お国訛りとは
仰るのですが、聞いた事のない
意味が全くわからないお言葉を
お話になったりします。信長様は何か
お気づきになられてることは、
ございますか?』
『わしも、貴様と同じように
感じている、日を追うごとに
何かを迷うておるように見える。
今日からまた一緒に過ごすで
あろうから、何か気づいたら
知らせよ。よいな』
『はい。承知致しました。
では、これにて失礼致します』
と退室した。