第10章 〜ありふれた日々〜
安土城まで仲睦まじく歩く二人を
後ろから歩く千草は
(桜奈様、本当にお幸せそうで
ようございました。千草も嬉しゅう
ございます)と目頭が熱くなる。
城の入り口で政宗に会った。
『相変わらず、仲がいいな、お前ら』
『おはようございまーす』と家康。
『政宗様、おはようございます。
また、今日から安土城に戻りますので
宜しくお願い致します。』と桜奈。
『また後で、お料理を教えて頂き
たいので、お時間頂いても宜しいですか?』
『おぅ、いつでもいいぞー、家康用の
激辛料理教えてやるから!』
『ありがとうございます。』と
にっこり微笑んだ。
桜奈を見つめる政宗の眼差しが
一瞬、違って見えた家康は
『桜奈、先に行ってて』と
桜奈と千草を先に向かわせた。
そして、政宗に『政宗さん、一瞬目の色
変わってましたよ。全く油断も隙もない』
と、怪訝な表情になる家康。
『まぁな、隙あらばって正直思って
ずっと見てきたけど、隙なんか
これっぽっちもなかったよ。』と
少し寂しげな眼差しを桜奈に
向けていた。
『それにしても、お前の目の下の隈
ひでぇな。本当に傷治ったのか?』
『傷は、まぁなんとか。
これは、別の苦行のせいです。』
『お前も、祝言上げるまでは大変だなぁ
信長様は、桜奈のことになると
鬼より、おっかないしな』
『まぁ、でも昨日は、信長様に殴られた方が
まだ、ましって思いましたけどね』
『よく、耐えたな』と政宗は
同情するように家康の
肩をポンポンと叩いた。
『とりあえず、桜奈の希望だから
料理を教える為に桜奈は借りぞ』
『変な気、起こさないでくださいよ』
『バーカ、言ったろお前らの間に入り込む隙
なんて、これっぽっちもないのに
無駄な労力なんか使うかよ。』
『なら、いいですけど・・』
『心配すんなって、桜奈には
お前しか見えてないのは、誰が見たって
分かるから。お前もだがな』とニヤッとする。
『それにしても、お前らみてると
結婚も悪くないかもなって思えるな』
『政宗さん、女に困ってないでしょ
その中にいるんじゃないですか』
『馬鹿言え、一生惚れ抜く女だぞ
そう簡単にいるかよ。そんな簡単じゃねぇよ』
と、やはりどこか寂し気だった。